新生農委 農委機構と中間機構の連携 静岡県 農業会議・農業公社

 日本一の茶どころ、静岡県。茶園面積とその収穫量はともに全国の40%以上を占める。だが、茶園の多くは機械の利用が困難な傾斜地にある上、高齢化や近年の茶価の低迷で管理を放棄する農家が増え、茶園の遊休農地は年々、増加傾向にある。そのため担い手への茶園の集積や面的な集約化が喫緊の課題だ。
 4月に施行された改正農業委員会法で、担い手への農地集積・集約化は農業委員会の重点業務になった。この業務を軌道に乗せるには2014年に創設された「農地中間管理機構」との連携が一つのカギだ。
 同県管内の農業委員会の活動をサポートする農業委員会ネットワーク機構(静岡県農業会議、黒田淳之助会長)と農地中間管理機構(静岡県農業振興公社、大谷徳生理事長)は事務所をワンフロア化している。
 「日常的に情報交換ができる上、農業委員会にも必要な情報をすぐに提供できる」とそのメリットを強調する農業会議の塚本均事務局長。一方、中間機構の水口長八事務局長も「農地制度に精通した農業会議職員が近くにいて助かる。事業の推進上でも農業委員会と話がしやすい」と話す。
 農業会議主催の農業委員や事務局職員の研修会では、中間機構の職員と連携して農地中間管理事業の周知や現場への協力依頼に努めてきた。中間機構は東・中・西部の3カ所に現場駐在の指導専門員を置くが、農業委員が一緒になって実績を出す地区もある。
 森町の中川上地区では基盤整備が実施済みの優良茶園を地域ぐるみで守るため、担い手に集積を図り遊休農地の発生防止策を講じようと「中川上地区茶園集積検討会」を発足。メンバーは担い手、地権者代表、農業委員、JA関係者など12人だ。検討会を通じて地区内27.2ヘクタールを対象に貸し付け希望農地の募集を行い、その配分や契約期間の調整を進めた。その結果、6.1ヘクタール(地権者33人、76筆)の農地を中間機構に貸し付けて8人の担い手へ集積した。
 島田市では、大規模農業生産法人が中間機構を通じて遊休化した茶園を借り受け基盤整備を進めているが、農業委員がコーディネーター役で活躍している。
 「乗用機械が入らない傾斜地の遊休農地の受け手はなかなか見つからない。遊休農地の予備軍も含めて広く貸し付け希望農地を募集するなど、これ以上遊休農地を増やさない対策に力を入れたい」と水口事務局長は前向きな姿勢をみせる。

写真説明=傾斜地の茶園を遊休化から守るためには農委組織と中間機構の連携が欠かせない