人・農地プランの実質化に向けて 高知・宿毛市農業委員会

農業者に意向調査をする委員

 宿毛市農業委員会(岩本誠司会長)は、人・農地プランの実質化に向けて、2019年9月から2020年3月にかけて、農業委員と農地利用最適化推進委員が農地所有者や耕作者を戸別訪問し、後継者や今後の農地管理などについての意向調査を実施した。

 宿毛市は四国最南端に位置し、温暖な気候でブロッコリーなどの露地野菜、小ネギなどの施設野菜、文旦や小夏などの果樹栽培が盛んな地域だ。
 同委員会は農業委員11人、推進委員7人の体制。毎年、市の産業祭やJA主催の農業祭などで「農地・農業者年金相談コーナー」を設けて、農地に関する相談やあっせんなどを積極的に行っている=写真。

 同市は人・農地プランを12地区で策定している。人・農地プランの実質化に取り組むにあたって、市の農政担当課と役割分担を話し合った結果、意向調査は農業委員会が実施することになった。
 効果的に意向調査を行うため、同委員会事務局の小松憲司さんは、すでに意向調査を実施している農業委員会に何度も通ったり、集落座談会に関するセミナーに参加して情報収集を行い、検討を重ねた。
 調査にあたって、対象としたのは市内在住の農地所有者や耕作者の約500世帯。調査項目は、(1)年齢(2)後継者の有無(3)今後の経営意向(4)今後の農地管理の意向――の4点のみのシンプルなものにし、調査票の配布から回収まで委員が戸別訪問により実施した。
 小松さんは、「人・農地プランの見直しだけではなく、地域の将来について考えるきっかけとなる。課題の解決に向けて委員にはより積極的に関わってもらいたかった」と戸別訪問にした理由を話す。委員からは、「後継者がいない農家が半数以上いる。戸別訪問をしてみて、改めて担い手が不足していると実感した」との声が聞かれ、これからの地域農業を考える契機になった。農地の売買や貸借の意向の掘り起こしにつながるとともに、遊休農地の解消の相談も受けることができた。
 今後、未回収の農家に対する再度の戸別訪問と、所有者などが不明な農地に対する対応策の検討を行う。
 同委員会は今年7月に改選を控える中、次のステップである集落座談会の実施に向け、その持ち方などの協議を始める。岩本会長は「人・農地プランの見直しを通じて、地域全体で現状と課題を共有し、課題解決に向けて共に考え、話し合うきっかけづくりをしていきたい」と話す。