集積の次のステップ集約化へ 静岡・袋井市農業委員会

 袋井市は恵まれた自然・交通条件を生かし、水稲、メロン、お茶など多種多様な農産物を生産する県内有数の農業生産地帯だ。同市農業委員会(永田勝美会長)では農地利用最適化の一環として、集積の次のステップの集約化を推進するため、話し合いの組織作りとアンケート調査に取り組んでいる。同市今井地区の取り組みを紹介する。

今井地区農業推進委員会での話し合い

 今井地区は水田地帯で55年ほど前から基盤整備に取り組んできた。その結果、担い手の経営は安定して規模拡大が進み、今では集積率が8割を超える。しかし同地区でも農業者の高齢化や担い手の減少、土地持ち非農家の増加が進み、将来に不安を感じるようになっていた。
 そこで2018年度に、地区の農業と農地利用について話し合うため、地元の土地改良区理事長も務め、今井地区を担当する永田会長が呼びかけ、農業委員、農地利用最適化推進委員、部農会長、地域の農業者により今井地区農業推進委員会を設立した。

集約化された水田では、作業を省力化するため、遠隔操作で水管理できる水田センサーが導入された               

 集積・集約を進める上でどんな課題があるのか把握するため、市農政課とも連携し、地権者に2回のアンケートを実施。その結果、用水費の負担者が耕作者・地権者とバラバラで、誰が負担するかが集約の大きな課題であることがわかった。また、適切に管理してくれれば誰に貸しても良いと考える地権者が大半だということもわかった。
 加えて、担い手の労働力不足がますます深刻になることが予想される。経営を合理化するためのスマート農業を効率的に導入するためには、より一層の集約化が必要になる。
 そのため、農業委員・推進委員が農業者同士での耕作地の交換を促して担い手の負担を減らしていくことに取り組む。すでに市内12地区全てで組織を作り、今井地区を含め3地区で話し合いを行った。「今後は全地区でやっていきたい」と永田会長は意気込む。

 現在、同市で最も課題になっているのが茶畑だ。集積の進んだ水田と違い、山手に多い茶畑は基盤整備が遅れている。荒茶取引価格は現在も低迷が続いている。機械化への投資もできず、基盤整備しようにも地元負担の捻出が難しいため、耕作放棄地が増えつつある。状況が悪化すれば地域のコミュニティーが消滅する危険性もある。永田会長は「そこで農業委員・推進委員の役目がある。地域の人に集まってもらい、どうしたらいいか相談できる話し合いの場を持つことが一番必要だと思う。人・農地プランの実質化を進める農業委員・推進委員の役目は大きい」と話す。仕掛け作りは始まっている。