農地無断転用対策の成果着々 滋賀・栗東市農業委員会

 滋賀県の栗東市農業委員会(武村秀夫会長)では、農地部会が主体となって、一昨年度から無断転用対策に力を入れている。無断転用者を事務局に呼び出して担当委員自らが事情聴取し、是正指導に取り組んだ結果、過年度分も含め12件の無断転用のうち8件が解消された。

無断転用農地(上)や遊休農地(下)を現地確認する農業委員と推進委員                           

 栗東市は県南部に位置し、京阪神のベッドタウンとして若い世代を中心に人口が増えている。市街化区域やその周辺で住宅建設などの開発が進んでおり、農業委員会も開発に伴う無断転用が発生しないよう、目を光らせている。
 同委員会では毎年4月から5月にかけて、市農林課が主催する農業組合長会議で、遊休荒廃農地や無断転用と思われる農地を報告するよう依頼している。該当する農地所有者には、担当地区の農業委員と農地利用最適化推進委員が戸別訪問して是正を指導してきた。

 しかし、それでも是正されない12件の無断転用について、さらなる指導の強化が必要として、無断転用や遊休農地対策を担う農地部会の谷口敏彦部会長の提案により、一昨年度から事務局に呼び出して、担当委員自らが事情聴取と是正指導を行っている。
 事情聴取にあたっては農地部会長の他、担当地区の農業委員と推進委員が同席して無断転用となったいきさつを聞き、是正指導と今後の意向確認を行っている。

 無断転用となった農地は、開発許可など他法令との同時許可の必要がない自家用車の駐車場や資材置き場が大半であり、自己所有地であっても転用許可が必要なのを知らずに盛り土造成したのが原因だという。
 その結果、昨年度までに5件、本年度当初に3件が解消。この他1件が転用許可の準備中で、農地に復元する意向を示した所有者も1件ある。こうしたケースは10月に実施する利用状況調査の際に履行状況を確認していくという。
 無断転用の解消が進んだことから農業委員や推進委員からも「継続した取り組みが必要だ」との声が上がり、本年度も引き続き実施していく方針だ。
 無断転用者の呼び出しに取り組み始めてからは、新たな無断転用が発生していない。同委員会は、「呼び出し対策が市民全体に無断転用防止に向けたアナウンス効果になったのではないか」と話す。また、「今後も、駅や高速道路のインター付近など利便性の高い農地を中心に開発などが進んでいくと思われるが、無断転用が出ないよう農地パトロール活動にしっかりと取り組んでいきたい」と話している。