利用権を交換して担い手の農地集約 佐賀・江北町農業委員会

 佐賀県江北町農業委員会(大串俊實会長)では、県や農業公社などと連携して「佐賀段階 担い手集約化プロジェクト」に取り組んでいる。この取り組みは、担い手間の利用権の交換による農地の集約を進めるもの。県は同町をモデル地区に設定してマニュアルを作成し、他地域への横展開を図る予定だ。

候補地の選定について話し合う担い手と事務局

 県内の農地集積率は全国2位の71.3%(2018年度)で、20市町中9市町で集積率が80%を超えている。中でも県央に位置する同町では担い手への集積が進んでおり、担い手への農地集積率は94.1%となっている。

 一方、中核農家や大規模農家は規模拡大しても耕作農地が分散しているため、効率的な作業ができていないのが現状だ。
 また、離農する農家の農地の受け手はその都度話し合いで探してきたが、大規模農家がリタイアすると受け手探しが大変になることも不安視されていた。
 そこで、農業委員会が担い手間の利用権交換の取り組みとして農地集約化の会議を開いた。農業委員会や、担い手協議会の役員が中心となって、分散している農地などの情報を収集した。その情報をもとに、農業委員会事務局が農地利用図を作成し、14.7ヘクタール(62筆)を集約化候補農地としてピックアップした。

農地の交換状況を示した地図

 その後、農業委員会事務局がコーディネーターとなり、担い手14経営体(うち法人は5)を対象に農地のマッチング会を開催。提案がまとまりやすいよう受け手の候補を数名に絞り、人・農地プランのエリアごとに分けて説明を行った。その際、農地の状況が分かりやすいよう、色分けした農地利用図も活用した。
 加えて、農業委員会を中心に候補地以外での農地の交換と集約も断続的に行っている。離農などで新たな農地が出てきた場合には、農地を交換することで面積が減少した農家に対して優先的に配分する。集約にあたっては、農業者間ではお互いの利害が絡むため、農業委員会事務局などが農地の調整役(コーディネーター)を務めている。
 これらの取り組みにより、5.7ヘクタール(28筆)、担い手10人と4法人の交換がまとまり、交換した農家からは「農地間の移動時間が短縮し、効率化が図られた」との声が聞かれている。

 この取り組みを参考に作成されるマニュアルは、全県的な集約化の機運を高めるため、各地区に配布される予定だ。