県内初 所有者不明農地の貸し付け 愛知・豊川市農業委員会

 豊川市は県南東部に位置し、一年を通じて温暖な気候条件にも恵まれている。豊川用水が通じ、施設園芸など農業が盛んな地域だが、担い手の高齢化や農業後継者の不足により、次世代に優良農地をどう引き継いでいくかが課題となっている。

ファーム長沢の里が借り受けた所有者不明農地

 豊川市長沢地区は三方を山に囲まれた中山間地域。猪や鹿などの獣害も多い。農業従事者の多くが小規模な第2種兼業農家で高齢化が進んでおり、次世代に優良農地をどう引き継いでいくかが課題となっている。

 そこで、2018年6月から県農地中間管理機構が推進する「地域まるっと中間管理方式」による(一社)ファーム長沢の里を設立し、農地を地域で守る取り組みを進めている。この方式は、集落内の農地約34ヘクタールについて、農地中間管理機構を通じ、地権者を構成員とする一般社団法人が借り受け、農地の集積と有効活用につなげるものだ。
 この手続きを進める中、所有者は既に死亡しており相続人が分からない所有者不明の農地が見つかった。そのため、2018年の農地法等の改正により措置された所有者不明農地の公示制度を活用することにした。これにより知事裁定を経て農地中間管理機構から長期の利用権を設定できるからだ。

 同市農業委員会(権田展健会長)ではこの仕組みを使って、長沢地区の4筆・7152平方メートルの農地について探索を行った。登記名義人はすでに死亡しており、相続人は相続放棄していた。
 同委員会では2019年10月に所有者等を確知できない旨の公示を行い、6カ月経過後も所有者からの申し出がなかったことから、農地中間管理機構にその旨を通知した。
 機構は翌年4月に知事に対して裁定を申請。知事から当該遊休農地に利用権を設定すべきとの裁定を受けたことから、機構は当該農地をファーム長沢の里に対し、6月19日から約10年間の貸し付けを行った。
 ファーム長沢の里代表の小野博史さんは、「雑草が生い茂っていた当該遊休農地は、害虫が発生するなどして地域で問題になっていた。今後は地域で農地を守っていきたい」と話している。