農委会が所有者不明農地探索 長崎・壱岐市農業委員会

 壱岐市は福岡県の博多港から北西に76キロの距離にある南北約17キロ、東西約15キロの亀状の島だ。平坦部が多いため、耕地面積3850ヘクタールのうち水田が2420ヘクタールを占める。基盤整備率は61%となっている。65歳以上の農家の割合が6割を超え高齢化が進んでいるが、特定農業団体や農業法人による集落営農に積極的に取り組んでいる。

探索作業を行った本宮仲地区の農地

 壱岐市農業委員会(赤木英機会長)では、所有者不明となった約1ヘクタール、10筆の農地を農地中間管理機構を通じて水稲・麦・飼料作物を生産する農業法人へ10年契約で貸し付ける手続きに携わった。
 2015年に特定農業団体「本宮仲」の代表者と市農林課や農業委員会が本宮仲地区内の農地保全について協議を行った際、農地は農地として活用したいものの、地区内に所有者不明農地があり、農地集約が進められないまま棚上げとなっているところがあった。このままでは基盤整備済みの優良農地の荒廃が進むことも懸念された。
 そのような中、2018年に本宮仲が農事組合法人として法人化したことや、同年の農地法等の改正で相続人の探索範囲が簡素化されたことから、農地中間管理事業を活用した農地集約の機運が高まった。

 本宮仲は役員会や地域の話し合いで、所有者不明農地を含む地域の農地を農地中間管理事業を活用して借り受ける方針を決定。その意向を受けて市農林課は2019年6月19日に農業委員会へ所有者不明農地の所有者の探索を要請した。
 農業委員会では、10筆の所有者2人の相続人などの探索を行った結果、所有者が不明であると判断して探索を終了。同月24日から半年間公示を行った。公示期間中、所有者などからの申し出もなかったことから12月23日に公示を完了し、今年1月31日に農地中間管理機構へその旨を通知した。
 その後、機構は県知事への裁定を申請。8月には県の配分計画の公告も終わり、間もなく10年間の利用権の設定がスタートする見込みだ。

 地元関係者からは法律に基づく農地貸借となり、今後安心して耕作できるとの声も聞かれる。他方、同委員会事務局は「探索が簡素化されたと言っても今回は要請から耕作開始まで1年程度かかっている。簡素化のためにはまだまだ制度を見直す余地があるのではないか」と話している。
 同委員会では、他にも所有者不明農地が潜在していると見ており、これらが制度外貸し付けにつながっていることを懸念している。今後も担い手が安心して耕作できるよう、本制度を活用し、農地の利用集積を通じた地域農業の発展を支援していく方針だ。