委員が参画して話し合いリード 岩手・釜石市農業委員会

 ラグビーワールドカップ2019が開催された釜石市は、今年2月に四つの地域農業マスタープラン(人・農地プラン)の全てを実質化し、公表した。同市は総面積の89%が森林という中山間地域で、高齢化や担い手不足が著しいことから、地域が一体となり、農地を守り、活かしていくため、延べ21回の話し合いを行い、未来の地域農業をプラン化した。同市農業委員会(二本松誠会長)も、農林課とともに地区推進班を設置し、地域の話し合いをリードした。

集落ごとに地図を囲みながら農地利用の方針などを話し合った

 釜石市は、四つあるプランのうち1プランを昨年度に、残る3プランを今年度に実質化する工程表を作成していたが、実質化に取り組む機運が高まったことから、前倒しで昨年度に全てのプランを実質化した。
 実質化の取り組みにあたっては、農林課と農業委員会が役割を分担。意向調査を農業委員会、地図の作成を農林課が担当し、地域の話し合いは連携を図りながら実施した。

 意向調査は郵送により実施し、回答がない農家には、農業委員・農地利用最適化推進委員の他、農林課の職員も戸別訪問して回収にあたった。
 話し合いに利用する地図には、耕作状況や年齢、後継者の状況、今後の耕作の意向の情報も記載し、地域の状況が一目で分かるように作成した。
 地域の話し合いにあたっては、農業委員・推進委員、担い手、中山間地域等直接支払制度を活用した組織の役員などで構成する「地区推進班」をプランと同数の4班設置した。
 地区推進班は、班ごとの工程表や地区状況表の案に対し、現場に即した意見を述べた他、プラン案の検討、地図による現状の共有、集落の話し合いの日程調整を行った。

 集落の話し合いには、農業者や農地を貸したい人にも集まってもらい、地図を囲みながら、プラン案の説明をして、これからの農地利用の方針などを話し合った。
 話し合いの後、各地区推進班のリーダーを中心に取りまとめを行い、プランに仕上げた。「営農組合を中心とした米や加工トマトなどの生産に取り組む」「新規にソバの作付けおよび共同利用機械の導入を検討」「定年帰農者の受け入れ」など、地域の特性が表れたプランとなった。
 二本松会長は「農林課と共に取り組み、プランの実質化に農業委員会としての役割を果たすことできた。受け手がいないなど厳しい地域の実情だが、話し合いをしながらプランの実践に取り組んでいきたい」と意欲をみせる。
 今後、同委員会では、プランの実践に向けた活動計画を作成し、受け手の意向を確認しながら、農地中間管理機構の農地コーディネーターと連携して農地の集積・集約化を進めることとしている。