山間地域の営農体制づくりを推進 京都・福知山市農業委員会 土佐祐司推進委員・小原一泰農業委員

 将来、地域と農業をどう維持していくか――住民の高齢化率が50%を超える山間地域、福知山市三和町川合地域(6集落・273戸)では、農地利用最適化推進委員と農業委員が先頭に立って地域農業と集落の維持に奮闘。集落営農法人の設立から11年が経過した今、「守るべき農地」の明確化と「人材の確保」対策を戦略的に進めている。

(農)かわい設立時に代表を務めた小原委員(左)と、現代表の土佐委員                           

 2009年当時、農区長を務めていた同市農業委員会の土佐祐司推進委員と小原一泰農業委員は、地域に呼びかけて、地域農業の受け皿となる(農)かわいを設立。現在、水田25ヘクタール(320筆)を預かっているが、1筆平均10アール未満の川合地域では農地を集積しても作業効率が上がらず、すべての農地を引き受けられないジレンマを抱えている。
 そこで、土佐委員の提案で、昨年から、将来にわたって「守るべき農地」を峻別(しゅんべつ)するための地図づくりを開始。集落の農区長の協力を得て、農業委員会が行う利用状況調査の結果と中山間直接支払・多面的機能支払の協定農地を重ね、集落ごとに1枚の地図に表示した。
 「この地図があれば、農区の役員が交代しても集落の現状を共有し、話し合いを積み重ねられる」と土佐委員はその意義を強調する。
 「守るべき農地」は、現況が不作付けや未整備田でも栗園にするなど幅広い視野で利用方法を工夫。直接支払制度を活用して徹底して守る一方、それ以外の農地は耕作できなくなれば山に返すというもの。
 今後、この地図を農振地域の線引き見直しに反映させる他、京力農場プラン(人・農地プラン)の実質化の話し合いにも活用していく考えだ。

守るべき農地の地図

 地域農業や自治会活動に関わる人材確保が難しいため、移住者の受け入れにも力を入れている。
 土佐委員が代表を務める「川合地域環境保全活動協議会」では、市や府と連携し、移住希望者向け“お試し住宅”を整備。「季節を感じながら、それぞれのなりわいで暮らす」をキャッチフレーズに“地域のために活動する仲間”を募集している。
 「農業だけで生計を立てるのは難しい地域だが、川合に魅力を感じ、半農半Xで地域に関わってくれる人に来てほしい」と土佐委員。農業に関しては、(農)かわいがオペレーター登録者への農機の貸し出しや技術指導などで応援する。
 これまでの移住者のうち3人が(農)かわいの従業員となり、地域農業の新たな担い手として定着した。
 独居高齢者世帯の増加、自治会活動や農業の担い手の減少など厳しい状況でも、両委員が20年間進めてきた活動が着実に実を結びつつある。