農地を活かし 担い手を応援する 委員が自ら放棄地解消 宮城 栗原市農業委員会

認定農業者への農地集積に成果

 宮城県北部に位置する栗原市農業委員会(鈴木康則会長)では、2013年度より耕作放棄地解消のため、農業委員自らが農機具などを持ち寄って、ボランティアでの再生作業を実施している。認定農業者への農地集積の成果が上がるなど、周辺農家への波及効果も大きい。

 栗原市農業委員会は、2005年4月に10町村が合併し、経営耕地面積は1万4985ヘクタールで、再生可能な耕作放棄地は739ヘクタールある。農業委員は46人で農地法などの審議を行う農地部会は3部会設置。専門委員会として運営委員会、農政委員会、農業委員会だより編集委員会、女性委員会の4委員会が設置されている。
 農業委員会では、耕作放棄地の増加に危機感を持ち、その対策を農政委員会で検討を重ねてきた。その結果、農業委員が自ら耕作放棄地の解消活動を行うことで地域への波及と、解消の必要性を農業者に理解してもらうために「栗原市農業委員会荒廃農地復元モデル事業」を策定して運営委員会へ提言し、2013年から取り組んでいる。
 実施にあたっては、まず三つの農地部会ごとに再生可能な耕作放棄地1カ所をモデル地区に選定し、担当農業委員が所有者から耕作放棄地の再生作業と、再生した後に認定農業者への利用権設定の同意を得るための話し合い活動を行っている。認定農業者には、再生後の農地を引き受け、利用権が設定されるよう調整活動を進めた。
 作業は農業委員自らが機械を持ち寄り、伐採・草刈・耕起を行い、耕作できる状態に再生している。作業に係る機械などの運搬・作業経費などの負担は2013年度は農業委員がボランティアで行ったが、2014年度以降は市から一部が補助されている。
 再生された農地は2013年度は31アール、2014年度は56アール、2015年度は71アールで、毎年3人の認定農業者に利用権を設定する。
 地域の農業者の意識改革にもつながり、今では周辺の耕作放棄地も農業者自らが再生して作物の栽培や担い手へ貸し付ける動きも出てきた。
 鈴木会長は「高齢化や農業従事者の減少などで、耕作放棄地を解消する活動は非常に難しくなっている。課題として不在地主との事業に係る調整、耕作放棄地の再生に係る費用負担や引き受け手の確保などの問題はあるが、委員会としては農地の有効利用や周辺農地に影響を及ぼさないためにも、今後も積極的に活動していきたい」と熱く語る。

写真上=耕作放棄地の再生作業

写真下=部会ごとに再生作業に取り組む農業委員の皆さん