人・農地プラン実質化へ 熊本・甲佐町農業委員会

 熊本県甲佐町は農業者の3人に1人が60歳以上で、高齢化が進む中、農地を守り次の担い手へ引き継ぐために地域での話し合いが行われている。同町農業委員会(岡本篤幸会長)では、農業委員と農地利用最適化推進委員が町農政課などと連携し、人・農地プランの実質化を確実に進めていくための取り組みを行っている。

上揚地区の将来について話し合いをした

 「地域の話し合いの中で、まず話題に上るのは『高齢化』のことだ」と話すのは、2016年に農業委員となり今年で5年目を迎える平井豪さん(72)。
 平井さんが住む上揚地区は、周囲を里山に囲まれた中山間地域。世帯数は71戸、人口は162人で、このうち、農業従事者はわずか6人。主力の担い手は70代の認定農業者3人だ。
 地区の農地は水田6ヘクタールと畑5ヘクタール。湿田で圃場が狭く、車両の離合も難しい農道が多い。同地区の県営中山間総合整備事業上揚地区圃場整備事業委員長も担う平井さんは「新たな担い手に地域農業の未来を託すためには、大型の機械の利用ができ、大豆などへ転作できる、生産効率の良い農地が必要」と語る。
 地域の話し合いの場では、町内の担い手に行ったアンケートの集計結果などを説明した。アンケートでは後継者や第三者へ農地を任せたいとの回答が多かった。「担い手が『稼げる農業』を目指すために必要なことは集約と基盤整備だ」と粘り強く説いた。
 昨年度、人・農地プランの実質化と基盤整備事業を併せたプランが動き出し、地区の中心経営体となる経営者へ農地5.5ヘクタールの集約を計画している。
 平井さんは「常に『地域のために何ができるか』を考え、農業者と行政をつなぐ農業委員でありたい」と考え、農業者のサポートを続けている。

農業委員の平井さん(左)と岡本会長

 「農地の権利を動かせるのは農業委員会」と語る同委員会の岡本会長(75)。同県の農業委員会の組織運動である「くまもと農業・最適化推進運動」に基づき、甲佐・宮内、龍野、乙女、白旗の四つの農地利用最適化実践チームを立ち上げた。コロナ禍で中断していた地域の話し合いも先月から再開。町農政課が計画する各地域でのプランの話し合いには、農業委員と地域を担当する推進委員が参加。「高齢で耕作ができない」「誰かに農地を貸したい」など農地に関する相談や情報収集にあたる。
 岡本会長は「農家の高齢化による離農が問題になる中、後継者などの担い手にどのように経営を引き継ぐか。農業法人や家族経営など経営規模にかかわらず全てが一様に抱える課題だ」と話し、「農業が基幹産業である甲佐町。農業を中心に町の振興を図るため、農業委員と推進委員が力を合わせ、プランの実質化を進めていく」と力を込めた。