地域の農地を集積・集約化 町を超えて被災農家支援 宮城・川崎

 川崎町農業委員会(大松一男会長)は、農業委員11人と農地利用最適化推進委員10人の体制で、町内を5区分して農業委員と推進委員を配置している。畑作に適した農地を求めて町外から参入する農業者にも積極対応し、農地の集積・集約化を進めている。

高堀地区の貸借契約された農地の前に立つ平間委員(右)と菊池委員                              

 昨年10月に襲来した台風は県全体に被害を及ぼし、特に県南の丸森町では多くの農地が甚大な被害を受けた。そのような中、同町で野菜畑約5ヘクタールを経営していたある農業者が、土砂流入などによる被災で耕作不能になったことから町外に農地を求めていた。
 川崎町にも農地の照会があったことから、農業委員会では町内の数カ所を調査。日当たりが良く、特に水害の心配のない高堀地区の休耕地が適当と判断した。そこで、同地区内で耕作している平間正行さんと地区担当の菊池和子さんの2人の農業委員が、所有者35人の貸し付け意向の把握と交渉に取り組んだ。
 同地区には兼業農家や一人暮らしの農家が多く、日中は高齢者が1人でいることが多い。そこで、最初の2回は2人で訪問して事情の説明と貸し付け意向の把握を行った後、分担して訪問活動を行った。特に平間さんは地域の農家事情に明るく、昼夜問わず何回も訪問して親身に話し合いを重ねた。
 兼業農家や町外居住の農地所有者は「被災者を支援したい」と快諾してくれた。当初、23人の所有者から4.8ヘクタールの農地の貸し付けの合意が得られ、昨年12月の同委員会総会で利用権設定が決まった。

 一方、耕作を継続している高齢者、貸し付け農地や生前一括贈与した農地の所有者からは難色もあった。交換耕作など提案をしながら交渉を続けたところ、目標としていた5.2ヘクタールが集まった。
 地区には平間さんの顔を知っている人が多かったため、所有者の信頼も得られやすかったという。
 所有者の意向を尊重して、境界を残したうえで耕作を10年間継続することを条件に、合計で31人の所有者との農地の貸借契約が成立。今年1月と2月の同委員会総会で利用権の設定が決定した。
 同地区には将来的に農地を貸してもよいという所有者もおり、今後、一層の農地の集約化が期待される。
 同委員会では、当該被災農業者の経営が軌道に乗って耕作面積が増えていけば、波及効果で同町内の遊休農地の利活用も増えていくのではないかと期待している。