問題解決へ地区で機運高める 大分・豊後大野市農業委員会 農業委員 後藤茂廣さん

 豊後大野市は、農業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加が問題となる中、農業委員会をはじめ農業関係機関と地域の農業者が協力し、地域住民の営農意識を高め、農地保全や農業法人の設立など、地域活性化の取り組みを行っている。

住民参加の「大寒保全会」の泥上げ作業

 同市農業委員会(衞藤英教会長)は、今年5月に新体制移行後の2期目を迎えた。農業委員は15人、農地利用最適化推進委員は30人の体制だ。
 今回の改選で初めて農業委員に就任した後藤茂廣さん(72)は、農業委員就任以前から地区の地域活動を行う「保全会」や「農業法人」を立ち上げ、役員として活動してきた。
 後藤さんの地元である同市犬飼町大寒地区では、「このままでは農地が荒れて限界集落になりかねない」と住民の危機感が高まった。そこで、後藤さんが中心となって地区内で話し合いを重ね、2013年5月に大寒地区4集落85戸の全戸が参加する形で、地区の農地維持など環境保全活動を行う「犬飼町大寒保全会」を立ち上げた。
 同保全会による獣害防止柵の設置や道路側溝の泥上げなどの共同作業により、住民全体で景観や農地を維持・継続しようとする意識が生まれるようになった。特に、環境美化活動は景観維持に貢献しており、地域の人たちから好評を得ている。
 地区内にある下山奥集落では、同保全会の活動をきっかけに「(農)おおそう」が2016年に設立され、後藤さんも役員として参加している。同法人は、下山奥集落の「人・農地プラン」の中心経営体の一つに位置づけられており、離農者の農地を集積。現在6ヘクタールの農地を25ヘクタールまで拡大することを目標にしている。

「大寒集落協定」設立総会(後藤委員は前列右から4人目)

 大寒地区は、中山間地の耕作条件不利地域で、一農業者や一法人で営農の条件整備を行うことは難しい地区。同地区の農地を維持管理し、継続して利用し続けていくためには行政や関係機関の協力が不可欠だ。そこで、後藤さんは今年8月に「大寒集落協定」を立ち上げ、同市に多面的機能発揮促進事業に関する計画の認定申請を行った。
 「協定の事業計画を着実に推進することにより、農地の維持管理、農業の重要性について理解を深めたい。また、規模拡大と農作業の効率化を進め、所得向上と雇用創出を図り、地域活性化につなげたい」と後藤さんは話す。
 同委員会では、各委員が「地域の世話役」としての期待にこれまで以上に応えられるよう、地域活性化に向けた日々の活動をバックアップしている。