担い手不足の地区 入作の法人に集約 富山・朝日町農業委員会 荒尾和彦会長

 新潟県に隣接する富山県朝日町では、耕地面積の85%を占める水稲を中心に、大豆や大麦などが生産されている。市街地である泊地区は担い手が少ないが、同地区を担当する同町農業委員会の荒尾和彦会長(62)の仲介で、担い手に13ヘクタールの田が集約された。

荒尾会長(右)と澤井代表取締役

 泊地区には、圃場整備が実施されるのが遅かった区域やそもそも実施されていない区域があり、狭小な田や不整形田が多い。そのような田は作業がしにくく収益が上がらないことから、多くが遊休化しているのが現状だ。また、兼業農家が多く、1戸当たりの耕地面積は小さい。
 (株)マッキーファーム(水稲18ヘクタール、大豆11ヘクタール、梅干し300キロなど)は、同町の大家庄(おおいえのしょう)地区で2016年に経営を開始した。
 澤井雅樹代表取締役(33)は経営面積を拡大しようと考えていたが、同地区は担い手が競合していた。そこで、担い手が少ない泊地区に進出したが、最初に借り受けたのは不整形田や用水が十分に供給されない農地だった。
 荒尾会長は、条件が良くない田での作業には苦労するだろうと澤井さんを気遣い、整形田を借り受けさせてあげたいと考えた。
 当時、同地区を担当していた農地利用最適化推進委員は、泊地区のある担い手に田を一部借り受けてもらっていたが、さらなる借り受けには難色を示されていた。そこで、荒尾会長は当該推進委員と同社を仲介。同社は当該推進委員が耕作していた田の約半分を借り受けた。

 荒尾会長はまた、他の二つの担い手経営体が耕作している整形田を同社に集約したいと考えた。当該の担い手の拠点は他地区にあり、農機の移動に時間もかかっていた。そこで荒尾会長は、当該担い手が耕作している泊地区の田と、同社が耕作している他地区の田の交換を提案。両者は同意して計9ヘクタールの田を交換した。
 澤井さんは、将来的に同社の事務所を大家庄地区から泊地区に移したいと考えていた。これを聞いた荒尾会長は自宅周辺の空き工場の所有者と同社を仲介。両者は賃貸借契約の締結に至った。
 同社は泊地区で、主に農地中間管理事業で田を借り受けている。その面積は13ヘクタールに及ぶが、今後も同地区で経営面積を拡大していきたい意向だ。
 荒尾会長は、「担い手に農地を集約するには、地区を越えて農地を流動化させる必要もあることから、町の農業委員や推進委員が全体で情報を共有する必要がある。今後は、離農を予定している農業者に働きかけて担い手に農地を集約したい。また、農地中間管理事業を活用して農地の貸借が行われる場合、出し手と受け手がやり取りを行わないためにトラブルが生じることもあることから、交流するよう促していきたい」と語る。