クラフトビールで町おこし 和歌山・高野町農業委員会

 日本仏教の聖地「高野山」の町として知られ、国内外から多くの観光客が訪れる高野町。総面積の90%以上を森林が占め、高齢化による担い手の減少、遊休農地の増加が課題となっている。同町農業委員会(柳葵会長)では、貴重な山間部の優良農地を次世代に残すため、遊休農地の解消や農作物のブランド化に向けた活動などを展開している。

2019年に開催したホップの収穫際には約170人が参加。
貴産ホップへの注目は年々高まっている

 同委員会は、町関係部署や民間企業と連携し、町オリジナルのクラフトビール「天空般若」作りの一翼を担っている。遊休農地の解消や、雇用創出などの地域活性化がねらいだ。

 同委員会などは2018年に町や関係団体で構成する「高野町クラフト般若協議会」(会長・平野嘉也町長)を設立し、活動を開始。町内の農業法人がビールの原料となるホップを富貴地区の農地で栽培し、町オリジナルのクラフトビール「天空般若」の加工・販売に取り組む。原料作りから加工・販売までの全ての工程を和歌山県内で担う「オール和歌山方式」が特徴だ。協議会へ参画する農業法人が農地中間管理事業を活用し、遊休農地を借り受けた生産も行っている。
 「天空般若」は2018年に完成。同町の宿坊限定で販売している他、本年度からふるさと納税時の返礼品にもなっている。
 平野町長は「限られた場所でしか味わえないプレミアムなビール。農業の活性化はもちろん、新型コロナウイルスの影響を受けている宿泊業などの活性化を目指したい」と意気込む。

昨年12月15日に
高野山真言宗総本山・金剛峯寺
(こんごうぶじ)
天空般若を奉納した平野町長
(左)

 同町では、農業委員が中心となって町内の農業者と連携し、2020年度から土壌改良実証実験を実施している。これはホップをはじめ、薬用作物として知られるトウキなど、同町で栽培される作物の収量や品質を向上させるため、有効となる土壌改良資材の研究や開発を行うことを目的としたもの。柳会長らの圃場で実証実験を行い、このほど土壌改良資材を完成させた。

 来年度は新たなブランドとして、この資材で栽培した野菜を販売する予定だ。土壌づくりから栽培、収穫までを一環してマニュアル化につなげ、地域の農業者や新規就農者の間で共有することで、誰もがブランド野菜を栽培できる環境作りを目指す。
 柳会長は「本年度はコロナの影響で実施できなかったが、四半期ごとに農業委員会主催の軽トラ市を開催する計画もある。われわれの活動を通じて、農業所得の向上や、地域の活力創出につなげたい」と語る。