農業者年金の加入推進活動に力 愛媛・八幡浜市農業委員会

 八幡浜市農業委員会(大本定一会長、農業委員19人、農地利用最適化推進委員17人)では、農業者の老後を支える農業者年金の加入推進に力を入れている。2020年には、新規加入者ランキング・区分別ランキングにおいて、五つの部門で賞を受賞した。

農業者年金基金からの表彰を5部門で受賞。
前列左から3人目が大本会長、4人目が樋田さん
本年度の農業者年金加入推進セミナーでは
樋田さんが加入推進事例を報告した

 八幡浜市は「日の丸」や「真穴」「川上」「蜜る」などの温州ミカンのブランドが確立されている全国有数の柑橘産地だ。
 同市農業委員会はJA西宇和と連携し、市内を五つの地区に分け、各地区で加入推進班を編成して農業者年金の加入推進に取り組んでいる。推進班は農業委員と事務局職員、JA西宇和の各事業所の担当者がメンバーで、1班当たり6~9人で構成されている。
 各推進班には加入推進部長(農業委員)が配置され、加入推進対策会議を開く。事務局が作成した認定農業者や認定新規就農者のリストに、メンバーが把握している新規就農者など声掛けをしていく対象者を追加する。リストがまとまれば、対象者ごとに担当を決め、農作業などの合間を縫って制度の説明に足を運ぶ。
 「制度を知って、所得に余裕があれば絶対に入りたくなる。だから無理に勧めたりはしない」と話すのは、農業委員11年目で、長年、矢野崎千丈地区の加入推進部長を務める樋田都さん。「現行制度は本当に良い制度。興味を持ってもらうことが私の一番の仕事」と笑顔で話す。

加入推進班ごとの打ち合わせの様子

 事務局の菊池誠晃係長は、「戸別訪問では、若い世代の農業者や女性へ重点的に声掛けをお願いしている」と話す。(1)掛け金は少額でも納付期間が長ければ運用益も含め、多くの年金原資を積み立てることが可能である(2)一定の要件を満たせば保険料の国庫補助を受けられる(3)支払った保険料の全額が社会保険料の控除対象となり節税対策につながる─などのメリットを一番受けやすいからだ。また、女性の方が男性よりも平均寿命が長く、老後資金の確保が必要であることから、経営主や後継者の配偶者への声掛けも呼びかけている。
 大本会長は、「声掛けをしていると、『年金はまだまだ先のことで、本当に今から備えが必要なのか』と考えている人が多いと感じる」と話す。そして、「今は分からなくても、将来、『農業者年金に入っていて良かった』と実感してくれる時が来ると信じて、加入推進活動にいそしんでいる」と産地の将来を担う若者に優しい目を向ける。
 こうした地道な声掛けが実を結び、近年では毎年10人以上の新規加入者を確保。昨年度は農業委員会が独自に設定した12人の目標に対し、後継者やその配偶者など20人の新規加入者を確保した。