地域密着の活動で農地集積に貢献 埼玉・横瀬町農業委員会 農地利用最適化推進委員 石黒夢積さん

 横瀬町(よこぜまち)芦ヶ久保(あしがくぼ)地区は、山々に囲まれた中山間地域。秩父(ちちぶ)市に隣接し都心から70㌔圏内に位置する。農業者のうち9割が65歳以上で高齢化が進んでいる。同町農業委員会(冨田哲夫(とみたてつお)会長)で同地区などを担当する農地利用最適化推進委員の石黒夢積(いしぐろむつみ)さん(35)。町の振興課などと連携し、人・農地プランの話し合いをはじめ、農地集積に向けた取り組みを進めている。

耕作放棄地の茶畑再生に携わった石黒さん(右)と横瀬町の町田勝一(まちだかついち)振興課長

 石黒さんは、2017年に「地域おこし協力隊」に就任。県内のふじみ野市出身で、8年間の会社員経験を経て同町に移住した。現在は約26㌃の茶畑を管理する。また同町で、集落の巡回、状況把握などを行う集落支援員としても活動している。
 20年の4月、同町振興課で芦ヶ久保地区の人・農地プラン作成に向けて取り組みが始まった。石黒さんが中心となり、7月には、同地区の農地所有者97人へ直接アンケートを配布。とりわけ芦ヶ久保地区は高齢者が多いことから、石黒さんが出向いて聞き取りを行うこともあった。戸別訪問して聞き取りを行うと、獣害にあっているなど、アンケートでは把握できないそれぞれの悩みを把握することができたと振り返る。アンケート調査後には振興課と結果を共有。その後、アンケートの設問に工夫を加え、地域の人が回答しやすく、より詳しく現状が把握できるようにした。戸別訪問で得られた経験が活かされた格好だ。
 石黒さんは、地域の状況を把握する取り組みの中で、「対面でのやり取りを心がけた。実際に顔を見て相手と話をすることで、うまく意見を引き出せたと思う。今回の取り組みで、農業者の理解をいただくことは、大事だと感じた」。

管理している茶畑で作業する石黒さん(左)

 同年11月には作付け拡大を希望する農業者に直接会い、話し合いの前に、内容を伝え理解してもらえるよう話す機会を作った。「多くの人の理解を得るためには事前にそれぞれの人の意見を聞いて、全体としてまとまるよう話をしておくことが結果につながった」と話す。同地区の農業者などとの検討会を経て、年度末には最終的な人・農地プラン作成に至った。
 「検討会ではさまざまな意見が出たが、これまでの取り組みをふまえ有意義な話し合いへとつながったと思う。役場の担当者とも相談しながら人・農地プランを作成できたので良かった」と話す。
 現在、石黒さんは横瀬地区内のうち宇根(うね)地区と苅米(かるごめ)地区の人・農地プランの作成に向けても準備を進めている。
 石黒さんは、今後も同町内の農地集積・集約に向けて「芦ヶ久保地区での経験を活かして取り組んでいきたい」と力強く語った。