「町農地バンク制度」をスタート 荒廃化する前に新たな担い手にバトン 三重・御浜町農業委員会

 三重県の南部に位置する南牟婁(みなみむろ)郡御浜町(みはまちょう)は、温暖な気候を活かし「年中みかんのとれるまち」をキャッチフレーズに柑橘栽培が盛んに行われてきた。一方で近年は、農業者の高齢化による耕作放棄地の増加と新たな担い手の育成が課題となっている。

 御浜町農業委員会(門定幸(かどさだゆき)会長)は同町と協力し、2022年1月から農地の売却・貸し付け希望者と新規就農や規模拡大希望者をつなぐ「御浜町農地バンク制度」を創設した。
 同制度は、農地台帳に登録されているおおむね10㌃以上の農地を対象に売買または貸借を希望する所有者が、農地の状態や希望金額などを明記した申込書を町に提出して登録する。町は個人情報を除き農地の状態がわかる航空写真とともに町HPと窓口で公表。農地の借り受けなどを希望する場合は、農地番号などを明記した利用申請書を提出することで農地のあっせんを受けることができる。情報は申請日から3年目の12月末日まで有効だ。

借り受け希望者への現地確認の様子。借り受け希望者には担当地区の農業委員が現地を案内し、実際の状況を確認してもらう
登録された農地情報。所在地と面積が、広域と詳細の航空写真とともに町HPと窓口で公表されており、借り受け希望者が現地に出向かなくても状態などがわかるようになっている

御浜町農地バンクの二次元コード。HPから登録されている情報が閲覧できる。

御浜町の新規就農者支援特設サイトの二次元コード。同町では、農地バンクをはじめ、新規就農希望者へのさまざまな支援施策に取り組んでいる

 同バンクの発足から農業委員会の各委員は、高齢による離農希望者には、戸別訪問しながら同バンクへの登録を働きかけてきた。また新たな担い手として自営業者などの「半農半X」対象者にはチラシなどを配布し、制度の周知と受け手の掘り起こしにも努めている。
 借り受け希望者には農地制度に準じて、全部耕作要件や地域調和要件などを確認。また新規就農者には農業経営の実務経験・研修経験などの有無を判断。農地所有者に希望者の情報を提供し、要望があれば町が両者間の調整を行っている。現在99筆、約12.4㌶の農地が登録されており、このうち5筆、約80㌃が担い手へ移譲された。
 同町農業委員会では、「農家の高齢化が進み、使われない農地が年々増えている。この制度を活用し、荒れてしまい耕作不能な状態になる前に、新たな担い手に引き継いでいきたい」としている。