政策提案で農業政策に働きかけ 宮城・大崎市農業委員会

 大崎(おおさき)市農業委員会(佐々木政直(ささきまさなお)会長)は、毎年、市農政に対する政策提案を実施している。認定農業者など担い手との地区座談会や女性農業者との意見交換会を開催し、多様な意見を集約して現場の声を反映した政策提案を作り上げている。

 大崎市は2006年3月末に当時の1市6町が合併して誕生した広域の自治体だ。市域面積は7万9681haで県内では栗原(くりはら)市に次いで2番目、耕地面積は県内トップの1万8400haを有する。17年には国連食糧農業機関(FAO)から「大崎耕土(こうど)」として世界農業遺産に認定された。広域なため、平坦地域は農地の規模拡大が進む一方で、中山間地域では鳥獣被害が多いなど、地域ごとの状況もさまざまだ。
 農業委員会はこうした地域の実態を踏まえて、地域農業者などとの意見交換会により得られた要望などを政策提案として市農政に反映させる取り組みを進めている。その一つが「1日女性農業委員会」だ。女性を中心に地域農業の課題や要望など、意見を出してもらう取り組みだ。参加者は各地域から女性農業者を2人選出するほか、県農業大学校や大崎管内の農業系学科の女子学生からも参加者を募って開催している。「意見交換では活発な議論ができるよう小グループに分け、各グループに農業委員や推進委員が加わり率先して議論を進行するため、意見がたくさん出てくる」と同市の担当者は話す。
 また、これまでの政策提案の内容を説明し、地域や団体ごとに出された意見がどのように政策提案に盛り込まれたかを説明している。担い手との意見交換会でも同様の説明を行っている。「農業者も自分たちの要望が市の政策に反映される期待が湧くと思う」と佐々木会長は語る。

10月24日に実施した政策提案(写真左から3人目が伊藤康志(いとうやすし)市長、同4人目が佐々木会長)
意見交換会の様子(11月9日、第2回1日女性農業委員会)

 これまでの政策提案により「大崎市アグリビジネス創出整備支援事業」が措置された。主な内容は、農産加工施設の改修や整備、機械の導入、販売促進に対する経費の2分の1を補助するなどだ。
 さらに東北初のジビエ加工施設が23年度に稼働予定だ。同市の猪捕獲頭数は19年度で690頭と年々増加。中山間地域での集落座談会では、15年から鳥獣被害に関する要望が続き、農業委員会では政策提案に有害鳥獣駆除対策を盛り込み続け、実現にこぎつけた。
 佐々木会長は「多くの農業者からいただいた意見をすり合わせて提案書を作成しているため、実情を踏まえていて重みがあるものだ」と語る。今後については「近年は米の消費拡大や肥料高騰対策、農機などの購入支援など市だけでは解決できない問題が発生している。関係機関との連携を意識して課題を解決していきたい」と意欲を語った。