特産品の企画と新規就農者支援に力 奈良・大和郡山市農業委員会

 大和郡山(やまとこおりやま)市は奈良県北部に位置し、県の北西部に広がる奈良盆地にある。総耕地面積は1080ヘクタールで、イチゴやイチジク、大和丸(やまとまる)なすの栽培が盛んな地域である。同市農業委員会は、新規就農者の支援に非常に力を入れており、毎年、数人の新規就農者が誕生している。

「いちじくヴァイツェン」完成までに携わった関係者一同(左から上田清市長、飯田喜代視会長、板東智也社長、礒部那由多さん、礒部俊惠さん)

 大和郡山市農業委員会(飯田喜代視(いいだきよみ)会長)は、規格外で出荷できなかったイチジクを使ったフルーツビール「いちじくヴァイツェン」を京都府木津川(きづがわ)市の「ことことビール㈱」と共同開発した。
 同委員会は昨年7月、ことことビールにイチジクを使ったフルーツビールの醸造を提案。11月に新規就農者など市内イチジク農家8戸から130キロを集め、同社によりイチジク特有のほのかな香りと爽やかな味わいが特徴のフルーツビールに仕立てた。
 イチジクを使ったフルーツビールは、近畿地方では初めての試み。1本330ミリリットル入りで880円(税込み)。奈良、大阪、京都のイオン大型店舗をはじめ、県内の道の駅や農産物直売所などで販売されている。
 いちじくヴァイツェンのラベルには、企画した同委員会の名前が記載されいる。またラベルデザインは、なら食と農の魅力創造国際大学校アグリマネジメント学科2年の礒部俊惠(いそべとしえ)さんとその娘さんで県立高円(たかまど)芸術高校美術科1年の那由多(なゆた)さん親子が考案。磯部さんはイチジク栽培での就農をめざし、市内の農家で研修中だ。親子で話し合いながら、同市のシンボルである、お城や金魚、イチジクをモチーフとしてデザインした。
 飯田会長は「イチジクビールを大和郡山の新しい特産品にできれば。今後も、わが市の農産物を使って新たな特産品企画をしたい」と意欲を示す。

いちじくヴァイツェン
新規就農者代表として発表する小塩大策さん

 新規就農者の課題として、よく挙げられるのが、農地の確保。同委員会は、新規就農者が安心して就農できるよう、県や市、農地中間管理機構と連携しながら農地の借り入れについて、あっせんを実施。また、ネットショップなどの農産物の販売先についても支援している。
 昨年4月に、高設(こうせつ)イチゴ栽培で新規就農した六田真吾(ろくたしんご)さんと小塩大策(こしおだいさく)さんは「大和郡山市の農業委員会は農家とのつながりが非常に強く、農家組合の役員や近隣農家へ、最初に紹介いただいたことで、周囲からの応援や支援を受けやすくなった。本当に感謝している」と話す。
 同委員会事務局では、現在、来年度に高設イチゴ栽培とイチジク栽培で新規就農をめざす2人の支援も行っており、「1人でも多くの若者が、本市で新規就農をめざしてもらえれば」と話す。