人・農地プランの成果を目標地図の素案に 福井・若狭町農業委員会

 今年4月、改正農業経営基盤強化促進法が施行される。とりわけ農業委員会の新たな役割として位置づけられるのが、地域計画における目標地図の素案作りだ。若狭町(わかさちょう)農業委員会(中塚文和(なかつかふみかず)会長)は、2019年から取り組んできた人・農地プランの実質化によって得られた成果を基本にして目標地図の素案作りを進めている。

 19年12月、同町農業委員会は人・農地プランの実質化に向けて、地域の農業者を対象に農地利用の現状や今後の営農意向を把握するためのアンケート調査を実施。同調査は郵送での送付・回収としたが、担い手である中心経営体には農業委員・農地利用最適化推進委員が戸別訪問して回収を行った。
 このアンケート調査結果を基に、20年には農業委員と推進委員が1地区10人前後の認定農業者と懇談会を開催。地域の農業委員、推進委員であることから農地の集積・集約化促進に対する課題などに率直な意見が出された。「同じ土地改良事業区内でも圃場条件が異なるため、集約化による作業効率の向上は疑問」とする意見や「10年後耕作できるかどうか分からない。確実に耕作するという自分の思いがあったとしても、農業情勢によって経営を継続できるのか危惧している」といった厳しい意見も出された。
 こうした地域に根ざした取り組みを各地区で実施し、町全体の農地集積・集約化対策の検討を進めている。

22年3月時点の瓜生地区の目標地図
委員と認定農業者との懇談会

 中塚会長は「目標地図は10年後の農地の姿を一筆ごとに利用者を明確化していくが、1回作成したらそれでいいわけではなく、毎年見直して実現していかないといけない。後継者不足などで事業継続が困難な農家が予測される場合には、目標地図自体の再検討や変更を加えていくことも必要だ。時には離農していく人が出てきたらどのようにしてカバーしていくか、目標地図の計画の中で検討していく必要がある」と語る。
 また、目標地図を作成する経過の中で担い手農家の意向により競合する農地が発生し、誰が耕作するのか明確にならないことがある。この場合、「調整地」として目標地図にAB、AHなど、調整が必要となる色を塗って識別を図り、委員による調整を行うようにしている。
 中塚会長の地元の瓜生(うりゅう)地区では、昨年、他地区に先行して目標地図の素案作成を実施。現在、新たに三宅(みやけ)・熊川(くまがわ)地区でも、話し合い活動により素案作りが進められている。
 今後は、同町の他地区でも話し合いを深め、目標地図の素案作成の取り組みを進めていくことにしている。