スムーズな就農をサポート 市、機構などと連携し農地マッチング 高知・安芸市農業委員会 小松 昌平推進委員

 施設園芸が盛んな安芸市(あきし)は、県内外からの就農希望者のサポート体制を整備している。同市農業委員会内川昭二(うちかわしょうじ)会長で農地利用最適化推進委員を務める小松昌平(こまつしょうへい)さん(55)は、農業者から農地の詳細な情報を収集し、就農希望者がスムーズに就農できるように市農林課や農地中間管理機構などと連携して、農地の貸し手と借り手のマッチングを支援している。

小松昌平さん

同市の就農サポート支援は就農相談をはじめ、農家での栽培研修、就農後を想定した実践的な技術を学ぶためのサポートハウスの整備などが中心だ。就農希望者は、こうした研修を修了した後、実際の就農をめざすが、そこには大きな課題もある。
 同市井ノ口(いのくち)地区で水稲70㌃、施設でナス40㌃を栽培している小松さんは、2008年に農業委員に就任。同時期に就農を希望する研修生の受け入れを始めた。農業委員を3期務めた後、17年に推進委員に就き、現在2期目を務めている。小松さんが農地のマッチングに取り組んだのは、知り合いの受け入れ農家から研修生が農地の確保に苦労している話を聞いたことがきっかけだった。
 一方で小松さんの地域でも後継者がいないなどの理由で離農する農家が少なくない。空き農地は一定程度見受けられたので、地権者を訪問し真意を確認したところ「農地は貸したいが、知らない相手には貸したくない」との回答が多かった。そこで貸し手と借り手のマッチングのために双方の情報収集に取り組んだ。

安芸市のサポートハウス

 貸し手には、所在地や面積のほか、貸したい意向の有無などを収集した。地権者の確認が必要な場合は農業委員会事務局に出向き調べた。また、JA高知県安芸集出荷場の運営委員長を務めている小松さんは、出荷をしなくなった農家やナスの苗を注文しなくなった農家に聞き取りを行い、今後の営農意向を確認。JAの職員にも農家から意向を聞き出すよう伝えた。借り手の情報は自身や他の農家が受け入れている研修生の情報も把握。小松さんは自身が受け入れる研修生を可能な限り水路掃除や草刈りの場に連れて行った。「人や地域を知ることができ、顔も覚えてもらえる。信頼関係を築く一歩となる」と話す。
 また農地の貸借契約は、貸し手と借り手双方の思い違いや誤解を招くことを防ぐため、当事者ではなく農地中間管理機構を通す。「賃借料と貸借期間は特に確認が必要。機構が間に入ることで貸し手が安心する」と語る。
 小松さんの取り組みが地域の農家に徐々に広まっていき、今では貸し手の情報が自然と集まるようになった。担当地域内では新規就農者が増えている。「農業委員の仕事は農地を探すだけではない。契約締結まで責任を持って取り組む姿勢が大事」と笑顔で語った。