積極的に遊休農地を解消 茨城・北茨城市農業委員会

 北茨城市(きたいばらき)は、太平洋岸の平らな地域と多賀山地内の中山間地域で農業が営まれてきたが、高齢化などによる担い手不足で遊休農地が多く発生している。同市農業委員会(大部康光(おおぶやすみつ)会長、78)ではこれまでに遊休農地対策に積極的に取り組み、2022年度には4.7㌶の遊休農地を解消した。

小林委員(右)と鈴木さん

  市の磯原町(いそはらちょう)を担当する小林勇(こばやしいさむ)農業委員(76)は22年度、地域の担い手へ働きかけ補助事業を活用し、同町木皿(きさら)地区と上相田(かみそうだ)地区で合計30㌃の遊休農地を解消した。
 小林委員は、農業委員会事務局を通じて国の補助事業「遊休農地解消緊急対策事業」を知り、活用。同事業は「農用地区域内の農地のうち簡易な整備で解消できる遊休農地」を対象に、条件を満たした農地を農地中間管理機構が借り受け、解消した後に耕作者に貸し付けるもの。
 地元青年会活動への参加や上相田地区の区長だったことから地元の信頼が厚い小林委員は、農地所有者のもとに足を運び、事業の活用を説得した。
 また、地域の担い手で遊休農地の周辺で耕作する木皿地区の作山孝一(さくやまこういち)さん(67)、上相田地区の鈴木義明(すずきよしあき)さん(59)にも声を掛け、遊休農地の解消とその後の耕作を依頼した。同事業は、機構が農家に遊休農地解消のための作業を委託できることから、作山さんと鈴木さんが自ら遊休農地を再生。その後機構から2人が転貸を受け、今年から水稲栽培が始まる予定だ。
 小林委員は「祭りを開催するなど、まとまりのある地区。今後も協力し合って農地の問題を解決していきたい」と話す。

再生された木皿地区の農地
(右から)関根時男(せきねときお)推進委員、大部会長、大塚暉夫(おおつかてるお)会長職務代理者

 市の中郷町(なかごうちょう)では、大部会長を中心に3人の農業委員と2人の農地利用最適化推進委員が協力して遊休農地を解消している。毎月1回は農業委員と推進委員が集まり活動状況を共有し、連携を強めている。
 これらの活動が功を奏し、22年度に同地域で約30年間耕作されなかった土地も農地に再生した。草木が背丈よりも高く生い茂る状況だったが大部会長が所有する重機などを使い、各委員が成長した樹木の伐採や抜根をし、石を取り除いた結果、約1週間かけて水田によみがえった。
 この水田は隣接する水稲農家に貸し付けることもでき、今年から作付けされる予定だ。
 大部会長は「両委員が集まって話すことで意見がまとまりやすく、素早い解決につながる」と話した。