「守るべき農地」を重点管理 佐賀・神崎市農業委員会 野田豊副会長

 神埼市農業委員会(西村睦雄会長)で副会長を務める野田豊さん(75)は、自分の担当地区で中山間地である岩田地区の将来を見据える。「守るべき農地」を重点的に管理するため、荒廃地の非農地判断通知の発出や地目変更登記の申請など、農業委員業務という枠にとらわれずに活動している。

野田豊さん

 野田さんは中立委員として2019年に農業委員に就任。元々、小売業や物流業など商業関係の仕事に30年以上携わっていたので、農業関係については知らないことが多く、最初は農業委員会の定例総会での話も理解できない状況だった。そこで野田さんは同じ活動班の農地利用最適化推進委員と話し合い、二つの活動に取り組んだ。
 一つ目の活動は、月例の勉強会。内容は、農業委員会などの組織方針、関係法律の概要、農業新聞や一般紙から収集した情報、自らの経験談などを活動班の仲間と共に学んできた。資料は毎月10㌻、野田さんが自分で作成している。
 二つ目の活動は、月に1回の合同巡回の実施だ。同じ活動班の推進委員からの情報をもとに巡回場所を決め、新しい遊休農地や無届けの転用地などの現地調査を行っている。現在では月2回に増やして実施している。

地区の集落から見た荒廃地(矢印から上が荒廃地)

 野田さんは活動する中で、農業が抱える課題の多さを感じているという。
 農業委員として地域に残せることはないかと考え、農業委員3年目の21年、「個人業務目標」を設定することにした。担当する岩田地区は、かつてはミカン栽培が盛んだったが、現在は農家が減少し荒廃地が激増していた。
 これらの荒廃地を作付け可能な農地に戻すには投資額が大きくなり、その回収は厳しい。それならば、最低限ここは守るという農地を見極め、荒廃地を山林に戻すことが、作付け可能な農地を重点管理していくための一番の方法と考えた。
 目標は「岩田地区の非農地判断農地の非農地通知発出と地目変更」と決めて活動を開始。書類を作成し、各農地所有者の相談や押印のため戸別訪問して分かったことが、荒廃地11㌶の30%が相続未登記だったこと、そして非農地判断農地の所有者から「気にしていたが、どうしてよいか分からなかった」という声が多かったということだった。
 野田さんは「農業者の中には自分の問題をどう解決したら良いか分からない人もいる。農業委員による情報提供が必要だ」と痛感した。最終的に1年間で㌶の非農地通知を発出し、20人分5,5㌶の地目変更登記を完了した。
 野田さんは農業委員・推進委員の活動について、「委員が農業者の困っていることに気付いていない。委員は積極的に農業者の中に入り、農業者が困っていることを見つけ、地区の集会で積極的に情報提供をするなど、農業者に対して受動態でなく能動態で活動すべきだ」と語った。