滝沢スタイルで地域計画を先取り 岩手・滝沢市農業委員会

 滝沢市農業委員会(駿河(するが)信一会長・68、農業委員9人、農地利用最適化推進委員11人)は、同市農林課と連携して農地の集積・集約化と遊休農地解消を進めている。同市では機構集積協力金の活用を念頭に、「地域まるっと中間管理方式」も取り入れた「滝沢スタイル」を実践。同方式は、地域の農地を全て中間管理機構に預け、その地域の農業者が会員の法人を受け皿にして農地を借り受け地域全体で営農するもの。滝沢スタイルは地域計画を先取りしており、県内でも注目されている。

駿河会長

 滝沢市は盛岡市の北西に隣接した水稲、野菜、果樹、酪農などを主体とした都市近郊農業地帯だ。特産品のスイカは、県内一の産出額を誇る。
 高齢化や近隣市町村からの入り作による分散錯圃など、各集落の農業は脆弱(ぜいじゃく)化していた。このため農業委員会の齊藤新一前会長が2021年、次世代に受け渡す農業の基盤を作ろうと地元の篠木地区において、地域で中間管理事業を活用し担い手へ農地を集積したのが滝沢スタイルのきっかけだった。
 滝沢スタイルは、①現況地図を囲み、将来像を協議②農地利用は緑区分の遊休農地解消も検討③地域の実情に応じて、協力金の活用と受け皿となる地域まるっと中間管理方式の法人設立も協議――といった形で、地域に寄り添い進められる。
 それぞれの地域に即した受け渡し方法を地域の農業者との話し合いで模索。その結果、22年度には2地区で地域まるっと中間管理方式での担い手法人が立ち上がった。

現況地図を囲んでの話し合い

 同方式で取り組んだ2地区の22年度集積率は、前年度に比べ53.4㌽増加。市全体で2.1㌽増加し、同市の集積率は51.2%になった。滝沢スタイルの横展開は順調に進められており、現在4地区で話し合われている。潜在的に相対での貸借も多い地域でもあり、中間管理事業にのせることで将来的な安心感につながり理解も進む。
 また、同市農業委員会は、22年度の委員活動日数が1人当たりの月平均13.7日で県内トップクラスだ。「委員同士の情報交換の中で、活動のいろいろなアイデアが生まれる。地域住民と気持ちを分かち合いながら日々活動している」と駿河会長は言う。事務局の積極的な声掛けに加え、表計算ソフトで独自に作った活動報告書も効果を上げている。同市では、今後も滝沢スタイルで地域計画策定と実践を進めていく。

市独自のエクセル活動報告書の委員への説明