全農地の所有者と耕作者の地図作成 埼玉・杉戸町農業委員会

 杉戸町農業委員会(後藤勇会長)では2022年、町内の全農地の所有者地図と耕作者地図を作成した。委員会を挙げて農業者を対象にした営農意向調査も実施しており、耕作者地図と調査結果などを組み合わせて、本年度内に地域計画の目標地図の素案作成をめざしている。

委員の努力で農地集積状況が一目でわかると話す後藤会長(右)と新堀直樹事務局長

 地図作りのきっかけは後藤会長の、「農業委員会活動においてもP(計画)D(実行)C(点検)A(改善)サイクルの実践が重要」という考えから始まった。
 まず農地の現状把握ができるよう、一筆ごとの農地所有者と耕作者の地図を作成した。農地所有者の地図は、農業委員会事務局が農地台帳の情報から作成。耕作者の地図は、相対の貸し借りも含め実際の耕作者の情報を地図上に落とし込む必要があったことから、農地利用最適化推進委員12人の担当地区別に、農業委員と推進委員がペアとなって調べ、作成。各委員が知り得ない耕作者情報は、所有者からの聞き取りで補完した。こうした委員の努力により、実際の農地集積状況が一目でわかる地図が完成した。
 地図作成後、農業委員会が行ったのはワークショップだ。総会終了後に全委員が班別に分かれ、推進委員の担当地区ごとに課題の抽出と解決のために何をすべきかを議論した。各班には事務局と町の担当者も加わり、事務手続きや制度などの疑問をその場で解消できるようにした。
 ワークショップと耕作者地図により、全農地の約8割を水田が占める同町では、農地の集約化がかなり進んでいることが確認できた。一方で、小区画農地は大規模農家から敬遠され、高齢農家によって維持されている現状も明らかになった。
 今後、小区画農地の対策は、遊休化を防ぐうえでもすぐに取り組む課題であることから、委員会では推進委員の担当地区ごとに農地集約や補助事業の導入について話し合いを進めるよう、重点地区を設定した。

委員が課題抽出などを話し合ったワークショップ

 また、農業委員会と町産業振興課が連携して国の補助事業「農地耕作条件改善事業」の先進事例を作り、その手法を重点地区に広く普及する。
 事業実施対象として選ばれた地区の地元説明会では、担当の農業委員と推進委員が出席し、行政の説明を補足。地区の将来の危機感や、補助事業の畦畔除去や区画拡大などで作業効率が格段に向上する委員の実体験などを説明した。これによりこの地区の合意形成は円滑に進み、24年3月に農地の区画が拡大される予定だ。これらの取り組みは農業委員会総会で報告され全体で共有された。
 後藤会長は、「町の農地は約1360㌶あるが、遊休農地にはさせたくない。そのためには耕作条件改善整備と農地の集約化が重要。委員全員で真剣に取り組んでいきたい」と熱い思いを語った。

将来の危機感などを話し合った地元説明会