耕作放棄地の発生防止・解消へ 出し手・受け手のバトンつなぐ 三重・鳥羽市農業委員会

 三重県の東端部に位置し、市全体の7割以上を森林が占める鳥羽市は、平均経営規模が約60㌃の小面積の農地が多く、大規模経営体の育成や農地の集積・集約化が困難だった。近年、農業者の高齢化などに伴い遊休農地が増加しており、耕作放棄地の発生防止と解消が課題になっていた。鳥羽市農業委員会(上村達男会長)ではこれらの解決に向け、2013年から独自の「農地バンク制度」に取り組んでおり、効果を発揮している。

 同市農業委員会では、農地の出し手から受け手にバトンをつなぐこの独自の農地バンク制度を活用し、これまでに3件、20㌃の農地が受け手に引き継がれている。
 同制度は、貸し付け希望者が農地の所在地や状況、希望貸付料などを記入した登録申請書を農業委員会に提出して登録する。抵当権や仮登記が設定されていなければ、荒廃の有無にかかわらず登録することができる。農地の売買のあっせんは行わない。
 農業委員会では、申請のあった農地の所在地や地目、面積などの情報を市のホームページで公開する。「土地の状況」も、「すぐ使える」「木が生えている」などわかるようにしている。公開した情報は申請日から5年間有効。現在、現況や位置図など詳細な情報の公開も検討している。
 借り受け希望者は、農地の利用目的や希望地区などを記入した利用申請書を提出する。農業委員会では「農地を耕作し、地域の活性化に寄与できるか」「農地を耕作し、地域住民と協調して農業を営むことができるか」を判断して登録する。
 それとともに希望条件に合う農地を選定し、現地を案内して紹介している。

借り受け希望者に要望に沿った農地を紹介できるよう、現地で確認する上村会長(左)

 農業委員会が現地を案内した後、借り受け希望者の希望農地が決まれば、その農地の所有者に利用申請者の情報を伝え、マッチングする。
 また、新規就農希望者の場合には、必要な農機具の借用や栽培技術の相談、土壌調査などについても適時応じている。
 現在、21筆、約315㌃の農地が登録。この8月には新たに3件の借り受け希望もあった。
 農業委員会ではマッチングに向けて調整中で、「もっと制度をPRし、農地が荒れないようにうまく利用してもらいたい」と話す。