タブレット導入で業務効率化 宮城・栗原市農業委員会

 栗原市農業委員会(吉田優俊(まさとし)会長)では、タブレット端末を活用し、農業委員会業務の効率化を進めている。効率化によって生まれた時間を活用して、委員会業務の充実や地域住民への周知活動などに取り組む。

吉田会長(左)と三浦会長職務代理

 栗原市は県内陸の北部に位置し、2025年に10町村が合併した県内最大面積の自治体だ。市の面積8万497㌶のうち5割近くが森林、約2割が田畑だ。管内の田畑が広域のため農業委員会が取り扱う情報量が膨大なことから、業務効率化を検討してきた。
 効率化を進めようと21年度に国のモデル事業を活用し、委員会活動の中で試験的にタブレット端末を利用した。その結果を踏まえ、21年度補正事業の「農業委員会による情報収集等業務効率化支援事業」を活用し、委員全員にタブレット端末を配布。総会や現地調査などで本格的な活用を始めた。
 月例総会では、議案書と地図などの資料を農業委員と農地利用最適化推進委員に電子データで事前に送付し、当日はタブレット端末のみで審議を行っている。
 農地パトロールなどの現地調査では、タブレット端末で農地情報を確認しながら調査を進める。その場で写真を撮り、後日、写真を見ながら相談や協議をしている。
 従来は資料を印刷し郵送していたため、届くまで約2日を要した。事務局職員は「資料をタブレット端末へアップロードするだけで全員に送信できる。情報伝達の迅速化、事務作業の効率化の効果は絶大」と話す。
 委員からは「資料がタブレット端末にあるため移動時にとても楽だ。農地情報の記録もタップで済むので、慣れると全ての作業がその場で終わり、効率的だ」と話す。
 三浦栄(さかえ)会長職務代理は「事務局から業務効率化につながることをていねいに説明されたため、導入に対して委員は前向きだった。タブレット端末を初めて使う委員がほとんどだったので、こまめに利用して体で覚えていった」と語る。また、「新任委員が一から操作手順を学ぶのは大変だ。タブレット操作が得意な若手委員の存在が大きい。また、農地パトロールでは通信環境が悪い場所に向かうことも多く、オフライン作業となるため、既存データとのひもづけ作業を随時進めるのが課題」と話す。

改選後にはタブレット端末研修会を開催

 同農業委員会は8月26日、「栗原市民まつり」に出展。委員が交代で対応にあたった。例年は女性委員が料理教室を開いて地域住民に地元食材と農業委員会のPRをしていたが、今回は農地等の相談会やアンケート調査、農業者年金、全国農業新聞のPR活動を行った。
 当日の相談件数は7件、アンケートは128件寄せられた。参加した委員は「相談やアンケートの主だった内容は、遊休農地の活用事例や高齢化により借り手が見つからないなど、農地管理に関する悩みだった。暑い中の開催だったが、地域の人々の生の声を聞くことができて貴重な体験だった」と話す。
 吉田会長は「業務のICT化など、農業委員会も時代に合わせて変化する必要がある。タブレットの導入で生まれた余裕を活用して、委員全員で地域の方々へわれわれの取り組みを周知することも重要になる」と語る。

栗原市民まつりで活動のPR