女性登用進め地域農業維持に力 千葉・袖ケ浦市農業委員会

 2022年4月、県内初となる女性の農業委員会会長が袖ケ浦市で誕生した。イチジク農園に情熱を傾ける注連野千佳代(しめのちかよ)会長だ。同市農業委員会は、女性農業委員登用拡大の努力を長年続けており、複数の女性委員が地域農業の維持・発展に向けて活躍している。

JAや直売所への出荷、観光農園など経営努力を絶やさない注連野会長

 東京湾アクアラインや館山自動車道に直結する袖ケ浦市は、東京ドイツ村などの観光資源や京葉工業地帯の南端にあたるなど多様な魅力を持ち、内陸に小櫃川流域の肥沃な農地が広がるなど農業分野も活発だ。
 国は20年に策定した第5次男女共同参画基本計画で、農業委員に占める女性の割合に関して早期に20%をめざすこととし、各地域で女性登用に向けた啓発をすすめてきた。県では、女性が農業委員になるという雰囲気が希薄だった時代もあったが、千葉県農業会議でも県と連携して首長や農業委員会へ女性登用の働きかけを続けてきた。
 同市農業委員会もコロナ禍以前から委員改選などの機会を捉え、各地域で女性候補の推薦を呼びかけていた。その結果、地域全体の意識改革も進み、現在では2人の女性農業委員と1人の女性農地利用最適化推進委員が在籍するなど効果が表れている。
 女性委員の一人である注連野会長は、水田転作でイチジク栽培に挑んだ父親の後を継ぎ、ひたむきな営農努力を続けてきた女性農業者だ。
 経営する「グリーンファーム三基」でイチジクを生産し、JAや市内の直売所「ゆりの里」などへ出荷する。
 また、イチジクのもぎとりができる観光農園や加工品製造も手がける。市のふるさと納税の返礼品としても注連野会長のイチジクが採用されているという。
 その経営手腕や姿勢などから地元の信頼を得て農業委員に推され、16年に農業委員、2期目の途中の20年に会長職務代理者を務め、3期目の22年には会長に就任した。

農業まつりでは率先して農業者年金の相談に当たった

 注連野会長は、事務局の支えのもと農業委員会の代表として総会や市議会での答弁に立つほか、JA君津農業まつりでは農業者年金のPRブースで率先して相談に当たるなど、さまざまなイベントに対応する。
 注連野会長は「何事にも『今できることをできるだけやる』をモットーに臨んでいます。私が会長就任後、各委員からの発言や議論が活発になったのではないかと感触を得ています。今後も農業委員、推進委員、そして事務局職員に支えられながら、農家や関係機関の期待に応え、地域農業の維持・発展に貢献できるよう努力していきたい」と語った。