「特定生産緑地制度」周知に全力 東京・羽村市農業委員会

 羽村市農業委員会(石田正弘会長)では、市やJAと連携し「特定生産緑地制度」の周知活動を進めてきた。また、市民の都市農業への理解を深めるため、積極的な情報発信や交流活動など、都市農地の保全に向けた多様な活動を行っている。

石田会長

 東京都内で農業の盛んな西多摩地域にある羽村市は、都市化が進む地域だ。高齢化や労働力不足などに加え、都市農業ならではの「相続による農地の減少」という課題を抱える。こうした課題を踏まえ、同市では農業委員会を中心に、減りゆく都市農地の保全に向けた活動に取り組んでいる。
 都市農地の保全・活用のため、2017年に生産緑地法の一部が改正され、生産緑地に指定されてから30年が経過する22年以降に、そこで営農する都市農業者は特定生産緑地の指定を受けるかどうかの選択を迫られた。
 羽村市は、特定生産緑地の指定に向けて農業委員会とJA、都農業会議が協力し、生産緑地の所有者を対象に計5回の説明会を開催。制度を知らずに指定期限を迎えてしまう所有者を出さないために周知活動を続けた。その結果、22年に指定期限を迎えた90%以上の対象農地が特定生産緑地を選択するなど、成果を上げた(22年11月時点、都農業会議調べ)。
 制度説明時には、都市農地貸借円滑化法に関する説明を併せて実施。生産緑地の貸借が可能となったことで、さらなる都市農地の機能の発揮や将来的な選択肢が広がることを強調した。
 制度の理解が進むごとに貸借の件数は増え、23年9月末時点で市内の計1㌶の生産緑地が貸借されている。

特定生産緑地制度などの説明会

 市農業委員会は、市民の農業への理解醸成に向けた活動にも力を入れる。
 その一つは、情報発信活動だ。市農業委員会の広報紙「農政だより」は、組織活動の報告に加え、市内農業者の紹介や都西多摩農業改良普及センターの協力を得た研究・調査の結果などを掲載。農業者以外も楽しめる内容で発行する。05年と20年の全国農業委員会だよりコンクール(全国農業会議所主催)では経営局長賞などを受賞した。
 もう一つは市民との交流活動だ。市民が農家とともに農地を巡り収穫などを体験する「農ウォーク」を主催。毎年時期やコース、収穫物を変えており参加者からは高評価を得ている。参加した市民からは「農家の苦労がわかった」や「地元産の農産物を買いたい」など前向きな意見が出る。
 これらの活動で市民の農業理解は着実に進んでおり、市内農業を支えるサポーターも増えつつある。
 石田会長は「各関係機関と協力し、多くの農業者に特定生産緑地を選択してもらうことができた。都市農地を保全するには、制度面だけでなく地域での理解も必要となる。市民への情報発信や交流活動なども継続していきたい」と話した。

収穫などを体験した農ウォーク