衛星画像から遊休農地を自動判定 福井・坂井市

 坂井市とソフトウエア開発の㈱ネスティ(福井市、進藤哲次代表取締役)は、県民衛星「すいせん」の撮影画像を活用し、遊休農地を自動判定するアプリ「農地パトロール支援ソリューション」を共同開発した。同アプリは坂井市農業委員会の協力もあり、実証実験で高精度の判定結果が出ており、今年4月から運用する予定だ。

 農地利用状況調査(農地パトロール)は、各農業委員会が農地法に基づいて、毎年農地の利用状況を調べる重要な業務だ。しかし、調査の際は管内全ての農地を対象とするため、「圃場数が多く、猛暑の中で行う確認業務は負担が大きい」「農業委員・農地利用最適化推進委員の土地勘や判断に頼る運用」「紙の地図作成や調査結果の手入力など事務局職員に負担」――など課題もあった。
 坂井市農業委員会(森勝義会長)では、管内の約6590㌶の農地を対象に、約1カ月かけて農地の地図を作成する。これをもとに農業委員・推進委員が7月~11月に現況を確認し、その結果を約2カ月かけてデータ化しており、他の農業委員会と同じく作業の負担が大きかった。
 市とネスティが共同開発した「農地パトロール支援ソリューション」は、県内企業などで組織する福井県民衛星技術研究組合(進藤哲次理事長)が2021年に打ち上げた県民衛星「すいせん」の衛星画像から遊休農地を自動判定する。開発には、農業委員会も協力。利用状況調査のノウハウの提供やアプリで遊休農地と判定された農地に行き、確認作業などを行った。
 アプリは、国から遊休農地の確認に人工衛星の利用が示されたことなどから開発を進めた。実証実験では約9割の精度で遊休農地を判定。タブレット端末で開くと農地の利用状況が程度によって4段階(「疑わしい遊休農地(重度・赤)」「疑わしい遊休農地(軽度・黄)」「耕作地(緑)」「判定不可(グレー)」)に色分けされ、その情報をもとに、現地確認する。
 また、アプリから出力したCSVファイルを農業委員会サポートシステムに取り込むことにより連携も可能になる予定だ。

池田市長(右)と進藤社長が市役所で会見した

 アプリは、今年4月からの運用を予定しており、利用状況調査は、農業委員で6割、事務局職員で9割削減できる見込みだ。
 アプリについて1月19日、池田禎孝市長と進藤社長が会見した。池田市長は「かなり省力化が図られ画期的。農地の有効活用や地域の活性化にもつなげたい」と話す。進藤社長は「作業負担を軽減し、農地を守るという本来の取り組みに寄与できれば」と語った。
 農業委員会の佐賀雅治事務局長は「アプリの導入により調査に係る業務負担が大幅に削減・効率化される。遊休農地を客観的に判定できることで、農業委員会が本来やるべき業務にまで手が回る」と期待を込める。