非農地判断と職権登記を促進 熊本・荒尾市農業委員会
荒尾市農業委員会(内田浩明会長)は、荒廃が進む耕作放棄地について、専任職員を配置して現地確認調査を実施。積極的な非農地判断と市の固定資産税部局と連携した市長職権による地目変更登記を進めている。本年度までの11年間で非農地化したのは3570筆、284㌶。守るべき農地の明確化で、農地行政の円滑化につながっている。
同市はブランド化している梨など果樹経営が盛んだが、高齢化や鳥獣被害の拡大で中山間地域での耕作放棄が進み、農地への復元が見込めない土地も少なくない。
農業委員会は、隣接する福岡県からの果樹の入り作者から「山林化しているところは非農地化しないのか」と聞かれたことをきっかけに、2013年度から非農地化と地目変更登記に着手。調査を専任する会計年度任用職員を2人採用した。所有者不明農地の探索でも会計年度任用職員1人を採用し、体制整備した。
現地確認調査は4月から10月に、専任職員2人が利用状況を確認。非農地に該当すると判断した土地については、11月に地区担当の農業委員、農地利用最適化推進委員と事務局が改めて現地確認を行い、12月の農業委員会総会で非農地化を決定する。
翌1月に所有者に対し地目変更の同意書を添付して通知。同意があった農地は、3月末までに固定資産税部局と連携して地目変更登記を行う。
調査には22年度からドローンも活用。立ち入りが困難な場所でも確認がスムーズに行えるようになった。
21年度からは、市長の職権による地目変更登記を実施しているが、後々のトラブルを避けるため現在も所有者に対する同意を求めている。職権による登記でも所有者の負担はないが、関心がない人や先祖伝来の農地への愛着などから、同意に応じる人は半数程度。相続未登記農地の存在も影響していると考えられる。
16年度以降の非農地化は年間百数十筆で推移してきたが、22年度は非農地通知が691筆(51.7㌶)、このうち職権による地目変更登記したのが372筆(53.8%)と大きく増加=表。23年度も非農地化の手続きは続いている。
内田会長は「この5年以内に耕作できない農地がかなり出てくる。守る農地は守り、そうでないところも地目変更して活用を促していく」と話す。