移住者呼び込み新たな担い手に 徳島 那賀町農業委員会

 那賀町農業委員会(吉田敏美会長、農業委員14人、農地利用最適化推進委員8人)では、県やJAと協力して地域計画の策定に積極的に取り組んでいる。特に将来の担い手を確保・育成するため町外からの移住者を呼び込もうと、就農相談から定着に至る支援を積極的に進める。

木頭地区で行われた座談会には地域の担い手や中心経営体など関係者が参加した

 県南部にある那賀町は95%を森林が占める中山間地域で、朝夕の寒暖差が大きく夏季の降雨が多い。農業は稲作をはじめ、ユズやスダチなどの果樹、オモトやケイトウなどの花き類、阿波晩茶、イチゴなど多様な作物が生産されている。
 町と農業委員会は、鷲敷地区・相生地区・上那賀地区・木頭地区・木沢地区の5地区に分けて、地域計画の策定に向けて取り組みをスタートした。このうち木頭地区では2023年12月、地区内の20㌃以上の農地所有者を対象にアンケート調査を実施。年齢や後継者の有無、今後の意向などについて、全228通の調査書を送付し87通(回収率38%)の回答を得た。
 この結果を踏まえ24年2月、地域の担い手や農地の貸し手を集めた座談会を開き、28人が参加した。地区の担当の農業委員と推進委員も参加し、意見が出やすいよう情勢報告や助言を行った。
 座談会では、経営体ごとに違う色で色付けをした目標地図、地域計画の案を作成し話し合った。参加者からは、「新たな担い手は町外から呼んでくるしかないが生業(なりわい)にできるか判断できず、就農を諦める人がいるのではないか。現実的な経営指標があれば新規就農する上で参考になると思う」など、新たな担い手の確保と育成に向けて意見が多く出た。
 また、中心となる15経営体が将来的な経営を検討し、意向に沿って無理のない範囲で引き受ける形で農地を守っていくことも合意した。中心経営体がさまざまな事情で営農の継続が困難になった場合には、農地中間管理機構の活用を通じて農地の保全管理や新たな担い手への農地集積を進めることも確認した。
 話し合いの結果は県やJAなどの関係機関との意見交換を経て、今年3月末に地域計画の策定、公表を行う予定だ。

 話し合いにも出た新たな担い手の確保について、同町では「移住者を担い手に」という視点から移住就農者の呼び込みを積極的に行っている。国の事業で次世代を担う農業者となることをめざし新たに経営を開始する人に交付する「経営開始資金」も担い手確保の一つで、これまでも移住者の呼び込みにつながってきた。
 町農業委員会では、県やJA、担い手の受け皿になる地域内の農業法人と連携し、就農相談はもちろん、定着に至るまで積極的に支援する。移住希望者を呼び込み、営農技術を伝えることで地域の担い手の確保・育成を図っている。定期的に地域ブランドの「木頭ゆず」やケイトウなどの新規就農相談会も実施しており、23年度は4人の新規就農者を確保した。
 町農業委員会は今後も新たな中心経営体の育成に力を注ぐ。