農地を活かし担い手を応援する 第2部 農地利用の最適化(37) 集落型農業法人を受け皿に

広島・北広島町農委会

 集落型農業法人を受け皿に、農地中間管理事業を通じて農地集積を進めているのが広島県北広島町農業委員会(市川由和会長)だ。 
 基幹作物の水稲経営が町全体の約7割を占める同町では、農家の高齢化が加速するにつれて、地域の水田を守り、効率的・継続的な生産を目指せる集落型法人の設立が相次いで進む(2016年1月現在、32法人)。
 農地中間管理事業が始まった2014年以降に設立された法人は3法人あるが、昨年秋に立ち上がった(農)なかばら(構成員23人、14.8ヘクタール)と(農)サイオト(構成員36人、31.4ヘクタール)はいずれも同事業が法人化のきっかけになった。
 同事業を活用すれば分散を極力回避して法人に農地集約が進む上、農地の出し手や集落に集積協力金が支払われ、法人経営に必要となる経費の足しになる。これらのメリットが集落の法人化に向けた動きを後押しした。
 また、事務局の田中正基課長補佐は「同事業のメリットや法人設立の手順を集落に教えられる農業委員や地域駐在コーディネーターの存在も大きかった」と話す。
 市川由和会長(65)は(農)サイオトの設立発起人代表として先頭に立って集落住民への説明に骨を折った。同県の農地中間管理機構が雇用する同町担当の地域駐在コーディネーター・市原政則さん(元農業委員)も説明会に顔を出して同事業のメリットを説明するなど、市川会長の活動をサポートした。
 もう一人の地域駐在コーディネーターの佐久間博さんは元農協職員で、集落法人設立のサポート経験もある人物。同事業の内容に加えて法人化に必要な手続きや順序まで集落住民につなぎ、(農)なかばらの法人設立準備を進めた。
 同事業を通じた農地集積で、同町の集積率43.6%のうち集落型法人への集積率は31%まで上昇した。事務局によると、法人の構成員となった農家からは「機構が間に入ってくれるので、賃借料の交渉で苦労しなくて済んだ」「法人への農地集約で集落内にあった遊休農地が解消できた」といった評価の声が聞かれるという。

写真説明=農地中間管理事業を通じて「なかばら」に集約された農地(黄緑色)