急傾斜、小規模など課題山積 アンケートで意向把握 長崎市農業委員会

 長崎市は、大半の農地が急傾斜の山腹に階段状に広がっており、全体的には規模の小さい農業が多く、果樹、野菜、施設園芸、肉用牛など都市近郊型の農業が展開されている。そのような中、農業従事者の高齢化、担い手不足、農家戸数の減少、農地の荒廃や非農地化が進行しており、農地の保全と担い手の確保が急務となっている。

 長崎市農業委員会(平尾政博会長)は、2017年7月に新体制に移行し、現在、農業委員18人、農地利用最適化推進委員24人で農地利用の最適化に取り組んでいる。
 同委員会では、「農地利用最適化に向けたアンケート調査」を2017年度から開始した。第1回調査として1500平方メートル以上の農業を営んでいる農家3815戸を抽出し、返信用封筒を同封した「アンケート調査」を郵送した。返信がなかった農家には、農業委員や推進委員が戸別訪問を行って回収を進め、約半数の1906戸から回答を得た。
 今後の農業経営について「規模縮小」意向が13%、「継続困難」が26%、「やめたい」が5%、また全体の44%が家族や親戚をはじめ、近隣農家などに貸しても良いとの意向を持つことが判明した。
 事務局は集計結果を昨年8月の定例総会で報告、農家ごとの意向を整理したリストを地区担当の農業委員・推進委員に配付した。このリストに利用権の終期が近い者や各委員が独自に収集した情報を加え、農地の結びつけ活動を進めた。

 2017年7月に初めて農業委員になった山脇貞雄さんは、農地利用最適化活動で主に琴海の形上地区を担当している。市地産地消振興公社で農地中間管理事業を担当する大山勝久推進員は良きパートナーだ。二人三脚で農地利用最適化に取り組み、18年度には15件、316アールの農地を農地中間管理事業を活用した貸借に結びつけた。
 最近増えているのは新規就農者からの相談で、アスパラガス栽培のための農地の借り受けの希望が多いとのことだ。山脇委員は、農地の借り受け希望の相談があると貸し出しを希望している地主に打診、マッチングできそうなら大山さんと戸別訪問して話をまとめて、手続きを行う。
 借りる人、貸す人の両者の意向に沿って貸借を成立させるには苦労も多く、借受希望者を5回も現地に案内してようやく結びけられた事例もある。しかし、2人は「農地中間管理機構を間にはさんだ方が、借りる方も貸す方も安心できるため貸借が進めやすい。今後は、アンケート結果も有効に活用しながら、一層の農地利用の最適化を進めていきたい」と口をそろえる。
 平尾会長は「今後は、人・農地プランの実質化に向けた集落での話し合い活動にも、アンケート結果を活用していきたい」と語る。

写真=山脇委員(左)と大山推進員