農地を活かし担い手を応援する 農年の加入推進に力 京都・久御山町農業委員会

委員が戸別訪問、制度を周知

 京都府久御山町農業委員会(奥田富和会長)は、農政情報部会で農業者年金の加入推進に力を入れている。同部会の農業委員で担い手を戸別訪問し制度の説明をすることで、昨年、府内最多の9人の加入を果たした。

 都市近郊の地の利から野菜生産が盛んで、若い担い手が多い同町の農業にとって、有利な支援制度の紹介など、農家への経営支援は重要な課題だ。そこで、町農業委員会は、2013年に農政情報部会をつくった。部会では「特に若手農業者には良い制度」と、農業者年金の加入推進を活動の一つに位置づけた。
 まず、農業者年金基金の勉強会に6人全員で参加。委員一人一人が制度の理解を深め、担い手の経営支援の最前線に立つとの意識を高めるとともに、加入推進の“戦略づくり”に取りかかった。
 次に反省点を洗い出した。説明会の開催では一般的な制度説明になって、個々に具体的なメリットがあるか伝わらず、興味を持ってもらえなかった。未加入者リストに基づいて、事務局主導で訪問しても、昼休憩や晩酌中でよく聞いてもらえなかった。
 これに対して、新たな作戦は、(1)まず農業委員自らが加入する(2)実感したメリットを身近な人に伝える(3)関心を持ってもらえたら事務局につなぐ(4)どう勧めるか、対象とする農家や話すタイミングは、担当委員の裁量に任せる――というものにした。
 「加入できそうか、いつ話しに行ったらいいか、個々の農業者の事情は近くの農業委員が一番よく分かっているから」と林吉一部会長。作戦により、委員は朝の作業が一段落ついたときなど、相手ごとに最適な時間帯を選びメリットをアピール。「申込書は農業委員会事務局に行ったらある。細かいことまで教えてくれるわ」という決め文句で加入推進に取り組んできた。
 女性農業委員の場合、家計を預かる奥さんに働きかけ、夫婦での加入を勧めたり、自分の息子と同世代の担い手に「このあいだ、うちの子も加入したんよ。あんたも入っとき」と声をかけるなど、女性ならではの視点からアプローチする。
 最近では、加入者にメリットが実感されはじめ、「近所の先輩から話を聞いた」「顧客が農業者年金に入っているという税理士から、節税になるからと勧められた」など、口コミで広がりが加速している。
 同委員会では、さらに周知を図るため、農業委員会だよりで加入者を紹介したり、町広報誌へ制度説明を掲載し、「知らずに入れない人をなくす」ことに力を注いでいる。

写真上=まずは農業委員一人で訪問し、農業者に制度を案内する

写真下=表紙に加入者のコメントを掲載している農業委員会だより