都市農地保全に向け全力 新制度の周知と条例制定に奔走 大阪府農業委員会組織

大阪府の農業委員会組織では、大阪の実情に応じた「大阪型農地利用の最適化」を推進。改正生産緑地法、都市農地貸借円滑化法の施行等を踏まえ、生産緑地所有者への制度周知や、面積要件引き下げに関する条例制定促進に取り組んでいる。

1992年の生産緑地法制定の際には、府内全体の農業・農地に大きな影響を及ぼしたことから、2018年3月の市町村農業委員会会長会議で「『都市農業振興基本法』『改正生産緑地法』を踏まえた農業委員会活動の強化に関する申し合わせ」を決定。JAグループと連携した農地所有者向け制度説明会の実施や、農業委員会法第38条に基づく市町村長への意見の提出などに積極的に取り組むこととした。
現在までに府内の農地所有者向け制度説明会には延べ約5500人が参加。また20の農業委員会が生産緑地指定面積要件の下限を500平方メートルから300平方メートルへ引き下げることを求める意見提出を行うとともに、5JAが13市長に対して同様の要望を実施。現在までに21市で面積要件緩和の条例が制定されている。
島本町農業委員会では生産緑地制度の導入について意見提出し、今年4月に約1.83ヘクタールが生産緑地に指定された。府内では三大都市圏特定市以外での初めての指定となった。
寝屋川市ではいち早く、2017年12月に生産緑地指定面積要件の下限を300平方メートルに引き下げる条例を制定。同市太間町の元農業委員、西島房夫さん(69)の346平方メートルの農地が昨年11月、新たに生産緑地に指定された。この農地で西島さんはJA出荷用のレモンの他、自家消費用の各種野菜、かんきつ類を栽培している。
今回の生緑指定に関して西島さんは、「体が動く限りは自分で作付けしようと思っていたのでありがたい」とし、また、「都市農地と税は切っても切れない関係。数十年となると負担も大きく、将来に向けて農地を残すために生産緑地制度は必要。何より、都市に農地が無いと寂しい」と話した。
大阪府内の農地1万3100ヘクタールのうち3割が市街化区域内にあり、その6割の約2千ヘクタールが生産緑地に指定されている。
府内の生産緑地の多くが指定から30年を迎える2022年が3年後に迫っている。それまでに、これまで通りの固定資産税等の軽減や相続税納税猶予の適用を受けられる一方で10年間転用等ができなくなる「特定生産緑地」の指定を受けるか選択する必要がある。指定申請、都市計画決定等のスケジュールを考慮すれば、特定生緑選択の機運醸成に残された時間はわずかだ。
府内の農業委員会組織では、大阪農業の今後を左右するこの問題に、引き続き、JAグループと連携して全力で取り組む。

写真=西島さん夫婦。新たに指定された生産緑地で