明日につなぐ(35) 佐賀県農業委員会女性協議会会長・武雄市農業委員 岩橋久美さん

 2009年に佐賀県武雄市の農業委員に就任し、現在4期目を務める岩橋久美さん。出身は市内の兼業農家。高校卒業後に神奈川県の一般企業に就職したが、結婚を機に退職し、武雄市へ帰郷した。
 経営は主にコメ、麦、大豆のほか、イチゴやイチジクを生産・販売している。1997年に家族経営協定を結び、早くから夫とパートナーとして対等な関係を築いた。50歳になった日に、夫から「やりたい事をやったらいい」と言われたのをきっかけに、規格外で出荷できないイチゴに付加価値をつけるためイチゴジャムの加工販売を始めた。
 農業委員の活動を通じて一番感謝を伝えたいのは「地域に住む親世代の方」だ。過去のほ場整備事業やパイロット事業のことなど、分からない案件や相談があると、当時の役員に「お知恵を拝借に来ました」と聞いてまわった。すると嫌な顔をせずに丁寧に教えてくれたと言う。「今後は、自分が教えられる立場になれたら」と抱負を語る。
 岩橋さんは農業委員の他に県が任命する指導農業士やJAさがみどり地区女性部役員なども務めている。「なかなか引き継ぎ手がいないから」。だからこそ、若い女性の農業者には「一歩前に踏み出す努力をしてほしい」と話す。
 「ポストが人を作る」。尊敬する先輩の言葉で、岩橋さんが大切にしている言葉だ。「最初から立派に役を果たせる人はいない。役がその人を育ててくれる」と自らの経験を重ねる。また、女性が役を引き受けて外に出るには周囲の理解も必要だと話す。