地道な説得活動で農地集積を推進 埼玉・加須市農業委員会

(右から)推進委員の田部井さん、藤原さん、穐山区長

 加須市は、利根川に沿った平坦な土地条件で、埼玉県内一の米の生産量に加え、キュウリやトマトなどの施設園芸をはじめ多様な農業が行われている。市域面積1万3330ヘクタールに対し耕地面積は6520ヘクタールという田園都市だ。しかし、高齢化や担い手不足などといった全国的な課題は同様に抱えており、加須市農業委員会(小倉和夫会長)では、農業委員・農地利用最適化推進委員が地区ごとに何度も現地を回りながら、県と農地中間管理機構と連携して農地中間管理事業による農地の集積を進めている。

 同市の樋遣川地区では、推進委員の藤原裕己さんと田部井繁さんが中心となり、農地中間管理事業を推進。対象面積の80%を超える314ヘクタールの農地の貸し付け意向を確認し、現在、機構への契約手続きを進めている。
 推進のポイントを「関係機関との連携の下、地域の役員の力を十分に生かすこと。熟慮して断行の機会を失うことのないよう、反対を恐れずに地道な説得活動を行うこと」と2人は話す。各自治会の区長を中心に関係団体とも連携しながら、自治会ごとに説明会を開いた。農地中間管理事業の内容の他、地域での課題について議論を重ねるなど、地権者の立場に立った丁寧な対応が実績に結びついた。地域に根付いた2人ならではの工夫だ。特に「土地や水利、地域の課題などに知識の深い区長の協力が重要」と話す。地区ごとにわけて推進を実施したのもそのような理由からだという。
 同地区内5地区の一つ、上樋遣川地区では、区長の穐山滿さんが中心となって推進組織を立ち上げ、地権者へ農地中間管理事業の説明会を実施した。その後、役員が地権者のもとへ足を運び、事業参加への同意をお願いするなどの工夫により、対象面積の約93%の農地が機構へ集積されることとなった。

 推進委員の藤原さんと田部井さん、穐山区長の3人は「農地中間管理事業は地域の将来を皆で考えるための手段。自分たちの地域は自ら守ろうという意識が何より大切」と思いを語る。「今後は担い手への集約まで取り組みを進めていかなければならない」と話し、地域で持続的に農地を守っていく体制づくりのきっかけとしていきたいという。