農地を活かし担い手を応援 耕作放棄地の解消加速 鹿児島県 志布志市農業委員会

 鹿児島県の志布志市農業委員会(山下昭一会長)は、耕作放棄地面積の増加、農業従事者の高齢化や減少などに対応して、国の事業でカバーしづらい農振農用地外の農地を対象とする市単独の「よみがえる農地復元対策事業」で耕作放棄地の解消に取り組んでいる。規模拡大する担い手に、農振農用地と、同事業で再生した農振農用地外の農地を一体的に集積を進める。

 同県は南北600キロにわたって県土が広がり、温暖な気候や広大な畑地などを生かした野菜、花き、茶などの生産が盛んだ。また豚、肉用牛(黒毛和種)の飼養頭数が全国第1位、ブロイラーの飼養羽数が第2位で、農業産出額が4263億円を誇る全国有数の農業県だ。しかし、耕作放棄地面積が1万ヘクタールを超え、農業従事者の高齢化や減少など課題も多い。
 志布志市ではこうした状況に対応するため、農業委員会が事業主体となって、2009年度によみがえる農地復元対策事業を創設した。その特徴は農振農用地外の農地(農振白地)を対象にしていることだ。
 担い手が規模拡大を進める上では、農振農用地と一緒に周辺にある農振白地の農地も一体的に集積したいところだ。しかし、国の事業では、対象を農振農用地に限るケースが多い。そこで、農振白地も対象にした市単独事業を用意した。
 補助基準は、大型トラクターなどで復元できる農地は10アール当たり1万5千円。大型重機などで復元できる農地は5万円を交付する。いずれも事業費の2分の1以内で受け手に補助が行われ、地権者と5年以上の利用権を設定することが求められる。
 これまでに42筆、約5.1ヘクタールの耕作放棄地を解消。その実績が認められて、同事業は2016年度も実施される予定だ。
 「農振農用地外の農地は一筆の面積が小さいが、農地の集積につなげることができた。最近は米価の下落もあり、耕作条件の悪い田が特に耕作放棄地化しやすい。地区担当の農業委員が利用調整を行い、それを未然に防ぐことも重要だ」と担当者は話す。
 同委員会では、昨年7月には4431筆、約413.4ヘクタールに非農地通知を発出した。非農地化を進めることで「守るべき農地」がより明確となった。今後は、農地中間管理事業や人・農地プランなどと連携をしながら耕作放棄地の減少に取り組んでいく。

写真上=再生前の荒れた農地

写真下=市単独事業で荒れた農地を再生し、担い手に貸し付けられた