地区一丸で集積・集約化 富山・高岡市農業委員会

 稲作などが行われている高岡市南部の戸出西部金屋地区では、JAや担い手、農地利用最適化推進委員、自治会、生産組合の協力の下、遊休農地の発生を防止し、分散錯圃を解消するために農地の集積・集約化が進められた。

(後列左から)廣地取締役、常木推進委員、常木保治・(農)大島営農組合代表理事(71)、(前列左から)高畑仁重・新西部金屋自治会長(72)、山本会長、JA営農指導員                      

 戸出西部金屋地区では、農地21ヘクタールの耕作管理を受託していた担い手が、病気により営農の継続が困難になった。また、当該担い手に作業を委託していた複数の個人農家(計5.7ヘクタール)などからも離農の意向が示された。
 昨秋、同地区を担当しているJAの営農指導員が当該担い手から相談を受け、新たな受託先の募集を開始した。
 JA営農指導員は戸出西部金屋地区から程近い同市の醍醐地区も担当しており、同地区の(有)スタファームの廣地聡代表取締役(50)に戸出西部金屋地区の農地受託について相談したところ、前向きな回答を得た。
 昨年12月末に、当該担い手やJA、スタファームの他、同地区の常木準推進委員(71)や他の担い手、生産組合長が集まって協議した。
 当該担い手が受託していた農地は、主要地方道の両側に分散しており、作業拠点から離れた農地もあった。加えて、近隣でスマートインターが開業したことにより交通量が増加し、農機の移動に危険が伴うようになった。そこで、受託農地の交換により作業拠点の周辺に農地を集約し、スタファームは21ヘクタールのうち14ヘクタールを受託することとなった。「年内に受託案の方向性を見いだしたい」と考えていた常木委員は、交換の調整にあたった。
 受託案が完成し、今年1月下旬に、自治会の協力の下、地権者を招集して説明会を開催した。当該担い手がこれまでの経緯について、JAが受託案についてそれぞれ説明し、受託案を了承するか否かを確認する文書を地権者に配布した。戸出西部金屋自治会の山本睦男会長(73)は、「遊休農地の発生は農家だけの問題ではなく、自治会としても防ぎたかった」と語る。
 受託案にはすべての地権者から了承が得られ、スタファームなどの担い手に受託農地が配分された。担い手への集積率は81%から88%に増加し、廣地取締役は「農地が集約されたため、作業効率が向上して作業計画も立てやすい」と話す。
 高岡市農業委員会(清水善正会長)は、「地区が一丸となって取り組んだからこそ、農地の集積・集約化が円滑に進んだと思う。市内の他の地区でも、高齢化などで営農の継続が困難になる事例は出てくると考えられるが、その場合は、本事例をモデルとして農地利用の最適化に取り組んでいきたい」と話している。