有機農業推進へ枠組み見直し

国内外で注目が高まっている有機農業。近年、若い農業者を中心に経営に取り入れようとする動きが増えている。一方で、生産や流通、販売の在り方に課題も多い。政府は推進に向け、夏をめどに施策の枠組みを見直す方針だ。有機農業の在り方が岐路に立っている。

需要拡大見込まれるも… 全耕地面積の0.5% コスト削減や集団化必要

有機農産物は欧米を中心に海外で需要が高まり、国内でも認識が広がっている。農水省は、2017年の有機食品の市場規模を1850億円と推定。同省の2015年の調査によると、有機農産物を現在取り扱っている、または今後取り扱いたいと回答した流通・加工業者は6割を超えた。すでに販売に乗り出している大手量販店もある。
一方で、生産が広がらない。2017年に有機農業が行われた面積は、全耕地面積の0.5%にとどまる。有機農業は慣行農業に比べ除草などに労力がかかること、農地の集約が進んでいないことなどから生産のコストが高くなりやすい。栽培技術の確立の他、遊休農地の再生利用も含めて、有機農業に適した農地の確保と集団化を進める必要もある。これに加え、有機農産物の日本農林規格(有機JAS)を取得する場合は、作業の記録や使用可能な肥料などの確認といった事務作業の負担が多いことが課題となっている。

綿密な栽培計画で収量・品質確保

全国農業会議所の調査では、2006年から2016年にかけて新たに農業経営を始めた新規参入者の約3割が有機農業を実施している。有機農業に取り組む農業者は全体の1%に満たない中で、こうした新規参入者への支援が求められる。神奈川県愛川町で有機農業を営む千葉康伸さん(42)は、「新たに就農する人は、資産も技術もない場合がほとんど。農地の確保や技術の習得に加え、地域に溶け込めるように周囲が助ける仕組みが必要」と指摘する。
有機農業を始めるため、10年前に研修先の高知県から同町に移住した千葉さん。この就農を、同町の農業委員会が後押しした。地権者と調整してまとまった農地をあっせんし、トラクターも借りられるように手配した。千葉さんは「農業委員会に地域の人とつないでもらったおかげで、良い環境で経営を始めることができた」と振り返る。
現在の経営は3ヘクタール。各地から有機農業を学びに来た研修生3人を受け入れ、ニンジンやタマネギ、里芋など約50品目を栽培する。地域の生協やスーパーに出荷している。今月に有機JASを取得し、輸出にも乗り出す方針だ。
土作りや肥培管理の徹底、綿密な栽培計画による収量と品質の確保で効率的な経営を目指す。有機農業で課題となる雑草や病害虫の対策は、マルチを使った太陽熱消毒や防草シートを活用して労力を軽減している。

写真=「新たに就農して有機農業を始める人への支援が必要」と話す千葉さん