後を絶たない――農地への迷惑行為 被害の実態と有効対策探る

 農地への不法投棄やポイ捨てなどの迷惑行為が後を絶たない。近年は、旅行者が無断で農地に立ち入ったり、農作業を妨げたりするマナー違反に悩まされる地域も出ている。被害を受けてからの違反者の特定や取り締まりは困難な場合が多いが、農業者や地域の対策で未然に被害を抑えることは可能だ。被害の実態と有効な対策を探る。

一斉清掃には農業者や地域住民約250人が参加。円内は善入寺島中州を守る会の阿部会長            

 吉野川の中流に位置する国内最大の中州、善入寺島。徳島県の阿波市と吉野川市にまたがり350ヘクタールの耕地を持つ県内有数の野菜の産地だが、無人島のため昔から道路沿いの不法投棄やゴミのポイ捨てが絶えない。対策で地域の先頭に立つのが、吉野川善入寺土地改良区や島の耕作者らが2007年に設立した「善入寺島中州を守る会」だ。
 同会は毎年7月に、地域住民も含めた約250人で島の一斉清掃を実施する。ゴミの回収量は開始当初の15年前には2トントラックで250台にも上ったが、今年は2~3台に収まった。「近年は捨てられるゴミがびっくりするくらい減っている」という。
 ヒマワリ約10ヘクタールやコスモス約5ヘクタールの植栽による景観づくり、「罰当たりな行為はできない」と思わせる小さな鳥居や防犯カメラの設置など、地域と協力して地道な活動を積み重ねてきた成果だ。経費の一部には農水省の多面的機能支払交付金を活用している。
 活動を通して、耕作者自身に「自分の畑は自分で守る」意識が根付いたこともゴミが減った大きな要因だという。マルチは使用後すぐに持ち帰るなど廃棄物の処理を徹底したことで、外部の人にとってもゴミを捨てにくい環境ができた。
 被害が再び増加しないよう、活動の継続と次世代への引き継ぎが必須だ。同会の会長で同土地改良区の理事長も務める阿部正德さん(69)は「島を守りたいという気持ちは強い。これからも農業者や地域住民が一丸となって、豊かな自然を後世に残していきたい」と力を込める。

 美しい景観を求めて農村を訪れる人が増える中、地域住民の生活を侵害する「観光公害」が課題になり始めた。
 新潟県十日町市峠地区の「星峠の棚田」は、年間約2万人が訪れる人気の観光地だ。写真や動画撮影のために多くの人が訪れるが、一部の旅行者のマナー違反が悩みの種になっている。農地に無断で立ち入る他、撮影の位置を確保する車が農道をふさぎ、農業者が自分の農地に入れないこともあったという。
 団体旅行者の立ち入りは撮影用の場所に限定しているが、個人は制限しきれない。立ち入りを防ごうにも棚田に入る細い道が何本もあって難しいという。
 同市松代支所地域振興課は「棚田は米作りのための農地。農作業に支障がないよう、決められた場所以外での撮影はしないでマナーを守ってほしい」と話す。