FRONT LINE 耕作放棄の茶畑 番茶で再生 静岡・菊川市 三嶋光博さん

 静岡県菊川市の三嶋光博さん(51)が、長年耕作放棄された茶畑の枝と葉を原料に「薪炒り番茶」を作っている。2016年に、茶師や県内企業の協力を得ながら、薪炒り番茶(株)を設立し、2017年から製造を始めた。味や取り組みが評価され、今年、世界緑茶コンテストで奨励賞を受賞した。放棄茶園の救世主になるかもしれない。

窯の前で、商品の薪炒り番茶を持つ三嶋さん
茶葉

 薪炒り番茶とは、3年以上伸ばした茶畑の枝葉を、薪で炒(い)ったもの。半年間寝かせ、もう一度火を入れて完成だ。遠赤外線で温めるため、枝の芯まで火が入り、甘くまろやかな味になる。カフェインも少なく、赤ちゃんや子供も飲みやすい。マクロビオティックなど自然食を好む人や健康や環境への意識が高い人からのニーズが高い「三年番茶」と言われるものだ。
 もともと東京でプロの音楽家として活動していた三嶋さん。2012年から同市の福祉施設で音楽を教える傍ら、就労支援をしていたことをきっかけに移住。住居に選んだ古民家の裏が放棄茶園だった。たまたま三年番茶を作る茶師と出会い、この茶園からはいいお茶ができると助言を受けた。
 三嶋さんは「移住にあたり、漠然と自然環境にいいことをしたかった。地域にも貢献できる取り組みになると考えた」と当時を振り返る。この意気込みに共感した県内企業などから支援を得て、工場を新築。事業が始まった。

 刈り取りは12~3月。放棄された茶園の枝はほとんどが2メートル以上になっている。それを2人一組で1株ずつロープで縛り、刈払機で刈っていく。枝についたクモの巣など不純物を取り除き、破砕機で砕き、窯に入れる手順だ。収穫や製造は地元の農家などに日当を払って、人員を募集している。
 枝の長さにより異なるが、10アールで1~2トンがとれる。この2カ月間で7軒分約5トンを刈り取った。破砕して炒ると約半分の重さになる。採れた標高や条件により異なるが、1キロ当たり約3千~8千円で取引されている。