列島最前線 地域維持・農業経営を両立 岩手 束稲山麓地域

北上川と束稲山の間に平地が広がる

 岩手県の一関市舞川地区、奥州市生母地区、平泉町長島地区にまたがる束稲山麓地域。北上川と束稲山に挟まれ、川が蛇行していることから洪水の常襲地帯だ。先人たちは山麓部を開墾して食料生産と安全な生活の拠点を築き、肥沃な平地で農業収入を得て生計を立ててきた。地域の維持と農業経営を両立するこのシステムの継承を目指した取り組みが進められている。

 2016年、官民一体で組織する束稲山麓地域世界農業遺産認定推進協議会が発足し、このシステムの世界農業遺産認定を目指している。2018年度からは地域活動を支援する「Save TABASHINE Program(セーブタバシネプログラム)」がスタート。新たな取り組みを試みる地域団体に企業が年間20万円支援し、返礼に米180キロ(2キロ×90袋)を贈るものだ。
 2005年から休耕田でソバを栽培している一関市の五区楽そば倶楽部は、プログラム利用の第一号。昨年、1日限定のそば屋を計4日間開業し、延べ130人が来店した。ソバを原料にした贈答品の開発もしている。同倶楽部を支援する(株)スーパーオフィス(東京都)の五日市文雄社長は「寄付だけでなく、地域の人たちと交流できることがうれしい。楽しみながら地域の活動に参加したい」とソバの播種や収穫イベントなどに東京から積極的に足を運ぶ。
 ため池の保全や農道の草刈りなど地域の環境保全活動をしている平泉町の14区営農環境保全会は、耕作放棄地を利用して新規作物の栽培を始めた。同会は、農家66戸と非農家2戸で組織。昨年、他県の傾斜地で栽培されているイモを当地域に適しているか試験的に植えた。結果は良好で、地域のイベントなどで料理を提供するため、今年はメニュー開発のために料理講習会を計画中だ。
 地域貢献に前向きな企業とのマッチングは同協議会がしている。現在、奥州市でも取り組みを検討中だ。事務局を務める県南広域振興局農政部の鈴木暁之課長は「住民自身が地域の魅力を再認識するきっかけになり、活気が湧いた。世界農業遺産認定だけが目的ではない。地域内外からの注目を集め、地域を活性化することで伝統ある地域資源を次世代につなげていくことが目標」と話す。