適切な営農型太陽光発電事業を模索 静岡県農業会議

 静岡県の営農型太陽光発電施設の設置状況は、430件(農林水産省、2021年3月末時点)と全国で2番目に多い。静岡県農業会議(西ヶ谷量太郎会長)では21年度、適切な営農型太陽光発電事業が行われるよう、県の協力を得て農業委員会の事務支援と下部農地の営農者に対する支援を2本柱に、「営農型太陽光発電設備に係る研究会」を立ち上げた。

 「パネル下の農作物が育っていない」「指導すると、更新時に作物を変更すると言われる」「地域で栽培事例のない作物の導入はどう判断したらいいのか」など営農型太陽光発電設備の設置にかかる農地法の許認可業務では、課題が多い。また、複数市町で事業展開する業者から、「農業委員会によって対応が異なるのはおかしい」とも指摘されるなど、窓口業務に当たる農業委員会担当者の悩みはつきない。さらに20年度末、荒廃農地の再生利用の場合、地域のおおむね8割超の単収確保の要件が緩和されたことで、農業委員会への問い合わせが増えたという。
 この情勢から同研究会では農業委員会担当者と検討を重ね、21年度末に事業申請時に窓口で聞き取る内容を具体化した「営農型太陽光発電設備に係る農地転用許可担当者のための補助マニュアル」を作成した。
 マニュアルには、転用申請者らに聞き取る6項目13個のチェックリストがあり、栽培経験の有無や年間の栽培計画、地域の平均単収、収穫見込み量、出荷先の確認方法、適切な営農と発電の両立につながるか──などを確認する。各農業委員会の判断基準の参考となるものだ。併せて「営農型発電設備の下部の農地における農作物の状況報告」の記載例と「作物別の栽植密度と目標単収(参考)」なども掲載した。
 22年度には、更新時のチェックリストなどを追加。今後も修正・更新していく予定だ。マニュアルは、県内だけでなく、県外の農業委員会や都県担当部局など計48カ所にも配布する。

営農型太陽光事業の事例見学会

 研究会では営農事例研究も実施している。営農者だけでなく発電事業者や設計・施工業者など延べ110人が参加、情報交換の場になっている。
 パネル構造物の営農への活用や災害時に地域に電力を提供するなどの優良事例の現地見学会、営農型太陽光事業を取り巻く情勢学習会など、これまでに2回開いてきた。
 経営発展に「可能性があり興味深い」と関心を示す若い農業者もおり、設備事業者からは「農作物への影響についての知見が乏しいので農業側から業者側に提案してほしい」などの声も上がる。
 今後は農業分野でも再生エネルギーの一翼を担うことが求められる。地域農業との調和と農業経営にプラスとなる営農型太陽光発電事業を育てるため、研究会では今後も支援を積極的に進める。