委員のリードで進む目標地図づくり 山梨 韮崎市農業委員会

 韮崎市農業委員会(柳本進会長)は、地域農業の未来設計図となる各地区の目標地図作りをけん引する。農業委員・農地利用最適化推進委員だからこそ把握している「地域の実情」や「担い手の思い」などを踏まえ、目標地図の素案作成を進める。

入戸野地区の目標地図

 県北西部に位置する韮崎市。南アルプスや八ヶ岳から流れ出る清冽(せいれつ)な水を利用した梨北米の栽培に加え、新府や大草の桃、穂坂のブドウなど、丘陵部での果樹栽培も盛んな農業地帯だ。
 同市農政部局では市域を自治会単位に分け、地域計画の策定を進めている。中でも水田地帯の入戸野地区では2023年11月、話し合いのうえ目標地図の素案が作成された。
 同地区は、人・農地プランを実質化した際に、地域の担い手が主体となった「入戸野農業の未来を考える会」を立ち上げた。地域農業の現状や課題についての話し合いや、意向把握のためのアンケート調査が実施ずみだったことなどが功を奏し、早期の目標地図作成につながった。
 同地区の話し合いの場では、農業委員・推進委員が担い手と地権者、農政部局との間に入り調整役を担当。また、目標地図の素案の作成時には地区の地形や水路の位置、担い手の意向を確認するとともに、農地の集積・集約化も調整するなど、素案作成をけん引した。

入戸野地区の話し合い(写真2)や目標地図の素案作成(写真3)では各委員がけん引

 入戸野地区の農業委員・推進委員は、自ら高齢農家から農作業を受託することがあり、実際に作業をしてみると作業効率が良くないことを実感するという。この経験から「農地を集約して作業効率を上げれば、新たな担い手が見つかる」という考えが生まれ、地権者と話し合う際には、集約を前提に農地を引き継ぐよう働きかけている。
 農業委員の山本弘行さん(68)は「高齢の耕作者は農地を誰かに貸したいと考えてはいるが、実際に貸すための行動をとることができないことがある。委員が一歩踏み込んで今後どのようにしていきたいかを聞き取ることで、農地の貸借が進むことがある」という。
 農業委員の深澤博文さん(60)は「農地の貸借で一番難しいのが賃料の設定だが、そのような時に地区の現状を把握し、農地の貸借に精通している委員が間に入り調整することで、貸借が円滑に進むことがある」と話す。
 農業委員会事務局の早川洋次長は「地域計画の策定は、地域の担い手が主体となって行うことに意味があり、計画を策定する際の調整やその実行には農業委員・推進委員の存在が必要不可欠」と力強く語った。