独自の農地バンク制度で貸借・売買 埼玉・川口市農業委員会
東京都に隣接し、市街化区域が市域の約9割を占める川口市。川口市農業委員会(松澤正久会長)は減少する農地を守り、市の農業の維持発展と農地利用最適化を推進するため、独自の取り組みを実施し、着実に成果をあげている。

川口市農業委員会は市内の農地所有者からの貸したい・売りたい情報と、耕作希望者からの借りたい・買いたい情報を登録し、仲介を行う「川口市農地情報登録制度(川口市農地バンク制度)」を2017年度から実施している=上図。
同市では農業振興地域が無いため、制度創設当初の農地中間管理事業が活用できなかった。それに代わる市独自の制度として、この取り組みが開始された。
現在登録されている農地情報は約54㌃。毎年度数十㌃のマッチングに成功しており、活動の中心となっているのが農地利用最適化推進委員の舩津新一さんと細田敏雄さんだ。
2人は登録した農地所有者を戸別訪問し、貸し付け条件の聞き取りや農地制度の理解促進など、一歩踏み込んだ働きかけを行う。一方、耕作希望者の意向もよく整理し、仲介を成功させている。
特に同市への新規就農者の場合は、意向を十分に把握した上で、農地所有者への説明を何度も行うという。この2人の仲介で新規参入した農業者からは、「農業委員会に相談してよかった」と評判も良い。

市の農地バンク制度の有用性について、「農業委員会が間に入ることが、安心につながる」と両委員は語る。また、「その後の農地利用が悪いと農業委員会への信頼が揺らぐ」と、利用状況の把握も余念がない。2人は「希望に合わないなど、調整が整わないことも多い地道な活動。農地を守るためにがんばっていきたい」と耕作希望者の思いに応えるべく活動する。
松澤会長は2人の活動について「大変助かっている。また、推進委員が現場で活動しやすい環境を整備するのも、農業委員会の重要な仕事」と話す。農業委員会としては、経営の安定が農地を守ることにつながるとの考えから、経営モデルの提案や立地を生かした観光農業振興などの提案なども視野に入れて活動していく考えも語った。