遊休農地を利用し市民農園を開設 三重・尾鷲市農業委員会
三重県の南部に位置し、海と山に囲まれている尾鷲市では近年、農業者数が減少傾向にある。これに伴い遊休農地が増えつつあることから、その発生防止と解消のため市民農園を開設。利用申し込みが殺到し、新規就農者の確保にもつながりつつあるという。

尾鷲市は、高齢化や若年層の農業離れなどで農業者数が減少し遊休農地が増えてきたことから、市と尾鷲市農業委員会(髙村敦夫会長)では解決に向け地元農家と協力。今年7月から遊休農地を再生し、レクリエーションなどで利用できる「尾鷲市有機市民農園」を設立した。再生作業は近隣の重機を所有する農家の協力を得て行われ、9月には最初の10区画、各15平方㍍の整備が完了した。ホームページなどで募集したところ希望者が殺到、瞬く間に募集区画がいっぱいになった。
開設のきっかけとなったのは、遊休農地の活用について地元農家から相談があったことから。同市では1月に「オーガニックビレッジ宣言」を行っており、有機農業の普及に取り組みはじめたという背景もあった。遊休農地だったこともあり農薬が残っている心配もないことから、「有機農業を行う市民農園」としての活用を計画した。
農地は同農園の開設に理解を得られた所有者の農地を選定。元は水田だったため、あぜ道や用水路も新たに設置し水はけを改善した。地域のボランティアの協力を得て獣害フェンスも設置した。
地元農家で園主の原勇生さん(71)と地域おこし協力隊の中川和彦さん(54)に依頼し、利用者への栽培指導などを行っている。農業経験の有無にかかわらずさまざまな人々が利用しており、意欲も高く自発的に農作業に取り組んでいるという。
市では2025年に新たに10区画、各15平方㍍を整備し、利用者の枠の増設を考えている。多くの利用者が来年度以降も継続する見込みだ。

同市ではまた、今年2月に「尾鷲市農地バンク」を開設。耕作または管理できなくなった農地の情報をホームページなどで公開し、就農希望者や規模拡大したい農業者へ紹介している。現在は、市民農園の経験から農業に興味を持ち、就農を考えはじめた人たちに農地を紹介する場としても期待が高まっている。
同市と同市農業委員会では、有機市民農園について「想像以上の反響があり、本年度の利用者が決まった後も、希望する声が届いている。さらなる遊休農地の解消を図り、この取り組みを通して農業に興味を持ち、新規就農者が生まれることにも期待したい」と話す。