人・農地プラン モデル地区設け推進 長野・松川町農業委員会

 下伊那郡松川町は、伊那谷のほぼ中央、町の中央を天竜川が流れる段丘の町で農地面積は1384ヘクタール、梨、リンゴなどの果樹栽培が盛んだ。

ワークショップによる話し合い

 2013年に策定された同町の「人・農地プラン」は町全体で一つのプランだった。同町では三つの旧村単位でプランの見直しを目指してきたが、対象範囲が広いこともあり、モデル地区を設定して成功事例を作ることから始めた。
 増野地区を担当する女性農業委員の北沢ひろみさんは、2018年6月に地区でのプラン策定を提起。町、農業委員会、南信州地域振興局支援チーム、増野地区のリーダーと協力して話し合い活動に取り組み、昨年3月にプランが策定された。
 同地区は果樹栽培に適した地域であり、世帯数53戸のうち果樹農家率は82%、専業農家率も9割と高い。しかし、60代以上の農業経営者が6割以上を占めており、規模縮小や引退する農家が増えることが懸念されている。将来を見据え、地域農業の方向付けを早急に行う必要があった。
 集落座談会を始めるにあたり、まず、地区内の全農家を対象に後継者の有無や地域農業のあり方に関したアンケート調査を実施した。北沢委員が調査票を配布・回収(回答率78%)し、その結果を事務局が地図に落とし、遊休農地の現況図も活用しながら、今後の農地の活用方針などについて議論を重ねた。

 座談会では、企業などで経営戦力の策定手法に用いられている「SWOT分析」を導入。増野地区の強みと弱みを分析した上で、ブレーンストーミングとKJ法を活用したワークショップ形式でさまざまなアイデアを参加者から引き出した。
 これにより、農業をリタイア・経営転換する場合には、地域の中心的な経営体に農地を集積することや、条件が整った場合には農地中間管理機構を利用していく方針などが明確化された。
 さらに、この話し合いが契機となり、20代から80代の住民22人が参加して共同作業を行う「楽しみまし農」(会長は北沢委員)を結成。遊休農地の発生防止につながる活動も展開している。参加者からは「共同作業は楽しい。果樹農家だから畑作業は楽しい」「できた作物でお祭りをしたい」などの声が出ている。
 同地区の取り組みは他地区にも波及しており、同町では八つのプラン作成を目指して取り組みを進めている。

プラン推進方針など確認 県農業委員会大会を開催

 昨年11月11日、県農業会議と県農業委員会協議会は、第4回県農業委員会大会を上田市で開いた。県内の農業委員・農地利用最適化推進委員など約1500人が参加した=写真。
 同大会では、「人・農地プラン」の実質化に向け、県の基本方針や、県、農業会議、JA中央会、農地中間管理機構、土地改良事業団体連合会の関係5団体の活動合意(改訂版)、「地域農業を考え、農地等の利用の最適化を進める長野県運動」(改訂版)について説明が行われ、これを踏まえ農業委員会活動の取り組み強化に関する申し合わせ決議を行った。